秋草図梨地硯箱

東京都江東区のお客様から、秋草図梨地硯箱をお買取りしました。

日本人にとって、春の桜と秋の草花は季節の移り変わりをしみじみと感じることができる大切な時期です。
古典文学の源氏物語でも、春を好むか秋を好むかで美しい女性どうしが知恵を絞って優雅にあらそう場面が描かれていますが、秋のしっとりした風情は美術品にふさわしい物でしょう。

今回のお品物に描かれている秋草図は、秋の草花を描きこんだ図です。
秋の草花と言えば、一般にはススキ(尾花)・ききょう・おみなえし・ふじばかま・葛・萩・菊などを指します。ほかにアザミなどをいれることもあり、どれも美しいけれどもはかなげな風情をただよわせる草花です。
そのはかなげな雰囲気が日本人の抒情をそそり、美術品だけでなく茶道具や調度品、着物の反物などにも好んで取り入れられる図柄です。

今回のお品物は秋草をあしらった、漆塗りの硯箱です。
梨地仕上げにしてあるため、漆器らしいつややかな光沢というよりは、シックな落ち着きが感じられます。梨地仕上げは、梨地粉という金粉や銀粉を漆塗りの平面上に蒔いて、つやを消す技法でです。蒔いた後に透明な漆を塗り、研磨して蒔絵の金や銀を浮き出させます。
梨地を使うことで秋草がくっきりと浮かび上がり、夜の風に吹かれている様子がまざまざと伝わるようになっています。

漆器・蒔絵