金やプラチナなど希少な貴金属には、数字やアルファベットの「刻印」(ホールマーク)が入っています。
刻印は、インゴットやジュエリーといった貴金属の「種類」や「純度・品位」をあらわす印で、財務省造幣局が検定したり貴金属の製造会社・ブランドが付けていたりします。
ここでは主な貴金属である、金・銀・プラチナ3種類の「刻印の種類と意味」をご紹介します。
刻印を見れば、貴金属の価値が分かる
貴金属の刻印は、ほとんどが英数字の組み合わせです。
たとえば金の刻印である「K+数字」は「金が含まれている貴金属で、純度は○○である」という意味ですし、「Pt+数字」ならプラチナであり、純度は○○であるという意味です。
刻印が重要視されるのは、貴金属の価値が「種類と純度・品位、重量」で決まるからです。
同じような白色の金属でも、刻印を見ればプラチナなのか、金+銀またはパラジウムの合金であるホワイトゴールドなのか、わかります。
さらに刻印の数字をみれば、純度がわかります。ほとんどのジュエリーや貴金属製品は複数の金属を混ぜ合わせた合金で作られているので、同じ重量なら、純度の高いほうが貴重で資産価値も高いのです。
貴金属製品に入っている刻印は金品位(純度)を表しています
指輪やネックレスなどに入った、K18、750の刻印を見たことがありませんか?
金の刻印は、「K+品位を表す数字」です。たとえば「K24・24金」は純度99.9%の純金。
金の品位は「24分率」のため、不純物のほとんどない純金は「24」であらわされ、他の金属の割合が増えるごとに、Kに続く数字が小さくなっていきます。
金製品に入っている主な刻印
呼び名 | 品位24分率 | 品位(旧表示)1000分率 | 品位(新表示)1000分率 | 純度(%) |
---|---|---|---|---|
24金/純金 | K24 | 1000 | 999 | 99.9 |
22金 | K22 | 917 | 916 | 91.6 |
20金 | K20 | 835 | 廃止 | 83.5 |
18金 | K18 | 750 | 750 | 75 |
14金 | K14 | 585 | 585 | 58.5 |
12金 | K10 | 500 | 廃止 | 50 |
10金 | K10 | 417 | 416 | 41.6 |
9金 | K9 | 375 | 375 | 37.5 |
貴金属に入っている刻印は、品物にどれだけ「金」が使われているかを、24分率又は、1000分率で示す表記です。
日本を含むアジア圏では、24分率を使われることが多く、欧米では主に1000分率が使用されています。
例えばK18 (750)の刻印があるアクセサリーであれば、18/24 = 750/1000
表記された刻印は違っても、金の含有量は同じ75%となります。
残りの25%は銅や銀、パラジウムなどが「割り金(わりがね・わりきん)」として使用されます。割り金の役割は、やわらかい金の硬度をあげて変形を防ぐこと、耐久性をあげること、黄色みやピンクなど色味をつけることです。
金の刻印では、Kに続く数字が大きいほど資産価値があがります。純金である「K24」と、2番目に純度が高い「K22」はインゴットや地金型金貨の素材です。カナダの「メイプルリーフ金貨」やオーストラリアの「カンガルー金貨」はほぼ純金のK24で作られています。
K24は金属として柔らかすぎ、そのままでは日常的に使用することは難しいものですが、金貨やインゴットはジュエリーのように身に着けるものではありませんから硬度が低くても問題がありません。
資産としての金の純度が重視されるため、K24を使うのです。
K22は、K24に次いで純度の高い金です。「割り金」はわずか8.3%で、91.6%は金です。
海外ではK22がジュエリー素材としてよく使われます。
たとえば人気のメンズブランド、クロムハーツのゴールドジュエリーは基本的にK22製です。地金型金貨の南アフリカ「クルーガーランド金貨」やアメリカの「イーグル金貨」もK22です。
金の刻印では「K」が入らないものもあります。
「999.9」や「916」「750」というふうに、数字だけが刻印されているジュエリーも存在します。数字だけの刻印はヨーロッパのジュエリーでよく見かけるもの。数字で純度をあらわしているのです。
ちなみに、金の刻印で見かける「K」はドイツ語のKaratを由来とする記号です。「カラット数」をあらわしており、英語やフランス語でCaratと同じ語源。割り金との重量比で、金の純度をあらわすための単位です。
金は価値が下がらない安定的な資産。そのため真贋判定が非常に重要になります。刻印が打たれていることは、「本物の金である」という重要な判断基準です。ですから、刻印がとても小さくて見つけにくい場合は拡大鏡や顕微鏡を使って探します。
刻印の位置はほぼ決まっており、リングなら内側に、ネックレスなら留め金、金杯なら裏側につけられていることが多いでしょう。ネックレスの場合は留め具とペンダントトップが別々のもので純度が異なることがあり、刻印も別のものが打たれている場合もあります。
貴金属の買取店では刻印を確認したのち、さらに素材をよく調べて、最終的な真贋判定をおこないます。刻印がなくても本物の金であることも多く、真贋判定には経験と実績が必要なのです。
「金メッキ」の刻印
刻印 | 意味 |
---|---|
GP | Gold Plated、メッキ |
GF | Gold Filled、金張りメッキ |
GR | Gold Rolled、金張りメッキ |
GS | Gold Shelled、金張りメッキ |
RGP | Rolled Gold Plate、金張メッキ |
GEP | Gold Electro Plated、電気メッキ |
HGE | HARD GOLD ELECTROPLATED、電気メッキ |
WGF | White Gold Filled、ホワイトゴールド張りメッキ |
金とよく似た外見のジュエリーには「GP」「GF」などの刻印があります。金メッキの刻印です。
金メッキとは、金以外の金属に電気を利用して金箔を貼りつけること。土台となる金属は金ではないため、軽くて丈夫なことがメリット。たとえば「K18GP」「K18GF」は、他の金属にK18でメッキをしたもの、と言う意味です。
ただし金メッキ製品は貴金属としてあつかわれません。外側は金箔なので見た目はK18と変わりませんがメッキされている金の量が少なく、土台となる金属に価値がないからです。また貼りつけた金箔は剥がれやすく、耐久性がないのがデメリットです。
「○○K(アトK)」の刻印
刻印 | 意味 |
---|---|
○○K | 通称・アトK 同じ刻印でも、金の品位は製品ごとにK22~K24と幅がある |
刻印の「Kが数字の後ろ」にある金製品もあります。通称「アトK」と呼ばれるものです。
日本の金刻印は、一般的に「K18」「K14」というようにKの後ろに数字が続きます。しかしKと数字の位置が逆転して、「18K」「14K」と数字の後ろにKがある刻印も見かけます。
「アトK(アトケー)」とよばれる刻印です。
「アトK」は、主に海外ジュエリーに見られる刻印です。ヨーロッパや東南アジア、ハワイなどで作られた金製品、または日本で作られたとても古い金製品についていることがあります。
特徴は「金の純度が、刻印表記の純度と違うことが多い」という点です。
たとえば「24K」の刻印があっても、分析器にかけるとK22の製品だということが起きます。同じく純金をあらわす「999」の刻印があるジュエリーでもK22であるなど、刻印のあらわす純度と実際の純度にずれがあるのです。
ズレの理由としては、ジュエリー制作時に技術が追いついておらず、純度にムラが出たと考えられます。製品を分析してみると刻印どおりのK24・純金である場合もあり、K22と判定されることもあります。
実際に分析器にかけてみるまで、正確な純度・品位が分からないため注意が必要なのです。
しかし「アトK」の金製品は決して偽物ではありません。お手持ちの貴金属製品やジュエリーに入っている刻印が「アトK」だった場合は、金品位の鑑定ができるベテランの買取業者に査定を依頼しましょう。
「銀」刻印の種類
呼び名 | 品位(旧表示)1000分率 | 品位(新表示)1000分率 | 純度(%) |
---|---|---|---|
純銀 | 1000 | 999 | 99.9 |
シルバー950 | 950 | 950 | 95 |
シルバー925 | 925 | 925 | 92.5 |
シルバー900 | 900 | 900 | 90 |
シルバー800 | 800 | 800 | 80 |
銀の刻印は数字だけ、「SV○○」、「純銀」と打たれています。たとえば純度95.0%である「シルバー950」なら、「SV950」または「950」の刻印です。
銀のインゴットの場合は「999.9」とインゴットの製造会社のマークがついています。
銀は非常に柔らかい金属のため、0.1%以下の割り金を加えます。
刻印は通称「スリーナイン」と呼ばれる「999」。割り金が入っていても、「純銀」「1000」の刻印がついている製品もあります。いずれもほぼ純銀です。
「STERLING」という刻印もよく見かけます。これは「スターリングシルバー」と呼ばれるシルバー925のこと。現在も世界各国で作られている銀で、発祥は13世紀のイギリスです。スターリングシルバーは7.5%の割り金を含みます。割り金は強度を上げるためのもので、おもに銅が使われています。
ちなみに、スターリングシルバーで作られたイギリスのアンティーク銀器・銀製品にはさまざまな種類の刻印が打たれています。
当時のイギリスは4つの国が統合した連合王国でした。銀製品には作られた国のシンボルが刻印として使用されており、たとえばイングランド王国なら刻印はライオン、アイルランド王国はハープ、スコットランド王国は城、ウェールズ王国は碇です。
ほかにも純度や検査所の刻印があり、合計で5種類の刻印が打たれています。
- 国の刻印:銀製品の作られた国のマーク
- スタンダードマーク:シルバー925であることを保証・ライオンの全身像
- メタル & ファインネス・マーク:純度のマーク
- アセイ・オフィス・マーク:検査所・検室所のマーク
- デート・レター:年代別のマーク
5種類の刻印の組み合わせで、いつ、どこで作られたものかが分かる仕組みになっています。
「プラチナ」刻印の種類
呼び名 | 品位(旧表示)1000分率 | 品位(新表示)1000分率 | 純度(%) |
---|---|---|---|
プラチナ1000 | 1000 | 999 | 99.9 |
プラチナ950 | 950 | 950 | 95 |
プラチナ900 | 900 | 900 | 90 |
プラチナ850 | 850 | 850 | 85 |
プラチナの刻印は「Pt」と数字の組み合わせです。よく見かけるものは、以下の3つです。
- Pt950(プラチナ95% 割り金5%の合金)
- Pt900(プラチナ90% 割り金10%の合金)
- Pt850(プラチナ85% 割り金15%の合金)
なお、日本ではプラチナ含有量85%未満のものに対して、政府の品位証明書が発行されません。そのため日本ジュエリー協会でもPt850以上のみを、プラチナ製品と呼ぶことにしています。
このほか数字のない「Pt」の刻印もあります。
かつてはPt850のプラチナジュエリーも多数作られており、いまも古いジュエリーには「Pt」の刻印がついていることもあります。数字のない「Pt」の刻印でもプラチナ含有量は高いので資産価値は十分あります。
まれに「Pt100」という刻印も見かけます。表記は「プラチナシルバー」とされるようですが、これはプラチナ10%、シルバー90%の合金です。
プラチナが含まれていますので価値はありますが、含有比率が低いのでプラチナ製品とは呼ばれません。シルバー製品にふくまれ、買取価格はシルバーに準じます。
いずれにせよ、買取店では分析装置や比重計でプラチナの真贋判定ができます。正確な純度で買取価格が計算されますので安心しましょう。
刻印不明・読めない貴金属の買取は、経験豊富な業者へ
貴金属の刻印は、「種類と純度」をあらわす大切なものです。経験豊富な買取業者は刻印を見ただけで貴金属の価値が分かり、分析器などを使用して、貴金属相場に応じた正確な査定額を算出できます。
刻印が磨滅してよく読めないジュエリー、見たことがない刻印がついている製品、そもそも刻印がついていないものであっても、資産価値が高いものも多数あります。
刻印に関して気になる貴金属製品の査定は、経験豊富なベテラン鑑定士に相談しましょう。