金を売却した時にかかる税金

日本では、売却で利益を得ると税金が発生することがあります。高額な貴金属である金を売買した時も、やはり税金がかかってくるのです。

金貨やインゴットなど高額な金製品を売却したり金貯蓄口座から収益が上がったりした場合は、主に以下の3つの税金が発生します。

  1. 譲渡所得に対する税金
  2. 雑所得又は事業所得に対する税金
  3. 20%税率の源泉徴収

金は高額商品ですから、譲渡益によっては高額な税金がかかることもめずらしくありません。金の売却をお考えなら、売却後の税金を計算しておきましょう。

譲渡所得にかかる税金

  • 譲渡益が50万円を超えると課税対象になる
  • 年間50万円までの特別控除がある

それほど頻回に売買して収益を上げているわけでなく、あくまでも金を「譲渡」することで、単発的に収入があるケースは「譲渡所得」にあたります。
サラリーマンの給与が主な所得で、金の譲渡益は副収入というイメージです。

譲渡所得には特別控除があります。
「金の譲渡益+そのほかの該当する譲渡益」の合計が年間50万円までは、控除対象です。つまり年間の譲渡益が50万円を超えない限りは課税対象にはなりません。
50万円を超えた場合は、給与所得などとの合計で「総合課税」の対象になりますので、注意しましょう。

「譲渡所得」5年以内・短期譲渡所得の計算方法

種別 所有期間 計算方法
短期譲渡所得 所有期間が5年以内 売却価額-(取得価額+売却費用)-特別控除50万円=課税される譲渡所得
長期譲渡所得 所有期間が5年以内以上 {売却価額(取得価額+売却費用)-特別控除50万円}×1/2=課税される譲渡所得

譲渡所得に課税される場合は、金の所有期間によって計算方法が変わります。
長期保有している金は課税対象額が少なくなるように計算されており、金を購入して5年以内の短期所有では譲渡益がそのまま所得に計上されるのです。

たとえば金所有5年以内で売却した場合の「短期譲渡所得」にあたるのが、以下のケースです。

  1. 3年前に金を300万円で購入。400万円で売却
  2. 『売却価額-(取得価額)-特別控除50万円=課税される譲渡所得』で計算
  3. 計算例)売却価格400万円-(取得価格・売却費用300万円)=100万の譲渡益
    100万円-50万円の特別控除=50万円の譲渡所得

この場合、譲渡所得が特別控除の50万円を超えていますから課税対象になります。控除をこえた50万円の譲渡所得に対して税金がかかります。

「譲渡所得」5年以上・長期譲渡所得の計算方法

計算方法 {売却価額(取得価額+売却費用)-特別控除50万円}×1/2=課税される譲渡所得

5年以上の長期所有していた金を売却した場合、譲渡益の1/2が譲渡所得になります。計算方法が違うので注意しましょう。

たとえば

  1. 7年前に金を300万円で購入。400万円で売却
  2. 『{売却価額(取得価額)-特別控除50万円}×1/2=課税される譲渡所得』で計算
  3. 計算例)売却価格400万円-(取得価額・売却費用300万円)=100万の譲渡益
    100万円-50万円の特別控除=50万円の譲渡益
    50万円×1/2=25万円が譲渡所得の金額

この場合、譲渡所得25万円に対して課税されます。
売却益が同じ100万円でも課税対象額が短期所有の半額になる点が、大きな違いです。

取得価額の算出方法

計算方法 金の購入代金+不随費用(購入手数料など)=取得価額

譲渡所得計算時の「取得価額」は、金の購入代金だけでなく、経費である不随費用も含む総額です。
しかし、金の購入金額や取得価額が分からなくなっているケースもあります。購入時から時間がたち、領収書や明細書が紛失していると正確な金額が分かりません。

取得価額が不明な場合は、「譲渡による収入の5%相当」で計算されてしまいます。
金の相場によっては損になることもありますから、領収書は紛失しないようにしましょう。

雑所得・事業所得にかかる税金

計算方法 総収入金額-必要経費=所得金額で算出
※雑所得か譲渡所得か。区分は税務署が判断する

サラリーマンとして給与所得を得ていても、営利目的で継続的に金の売買をおこなっていれば「雑所得または事業所得」になります。
雑所得・事業所得に対する税金は「総収入金額-必要経費=所得金額」で計算します。

「譲渡所得」の計算と基本的には変わりませんが、営利目的の金売買の譲渡益は「譲渡所得」にはなりません。雑所得となり、サラリーマンとしての所得と合わせて、「総合課税」の対象です。

税務署では「譲渡所得」か「雑所得」かを、実情に即して判断します。「年間に、〇回の金譲渡をしたら雑所得になる」という明確な基準はありません。
売買や現金化の頻度、金の所有期間などを考えて、税務署が判断します。

金投資口座・金貯蓄口座に対する税金

計算方法 一律20%(所得税15%、地方税5%)の税率による源泉徴収

投資目的で金貯蓄をしている方も増えています。
金投資口座や金貯蓄口座からの利益は、源泉徴収で完了です。それ以外の税金は発生しません。

なぜなら、金投資口座などからの収益は「金融類似商品」からの収益とみなされるからです。そのため一律20%の源泉徴収だけで納税は終了です。

本業以外に年間20万円以上の所得があるなら、確定申告

サラリーマンの場合、給与以外に年間20万円の所得があれば確定申告が必要です。金の譲渡益も所得に入ります。
金の売却階数や譲渡益の額に関わらず、年間の収入によって確定申告をすると決まっているのです。

ただし金の譲渡所得には「特別控除50万円」があります。控除分を差し引いた金額が20万円を超えなければ、確定申告は不要です。
金を購入してから5年以上保有している場合は特別控除を差し引いた分から、さらに1/2が差し引かれます。

つまり

  • 金の譲渡益から50万円分の特別控除が差し引かれる
    売却金額―特別控除50万円=控除後に控除枠を超えた金額があれば課税対象になりうる
  • 金を5年以上保有していれば、長期所得譲渡に該当するため
    売却金額―特別控除50万円=控除後の金額×1/2が譲渡所得。
    譲渡所得が20万円を超える場合は確定申告が必要

金を購入してから5年以上所有していると、控除後の金額を1/2にした額が課税対象です。これが20万円を超えなければ確定申告もいりません。

支払調書の提出の義務

  • 金売却を受託した事業者は、税務署へ支払い調書を提出
  • 支払い調書にはマイナンバーが記載

「支払調書」とは、支払った側が個人や法人に対して「どんな内容のものを、年間いくら支払ったか」を税務署に報告するための法定調書です。
以前は支払い調書の提出は任意でしたが、平成24年1月1日からは提出が義務付けられました。金を売却した全員ではなく、支払いが200万円を超える個人・法人については支払調書が必要です。ちなみに200万円という支払い額は、買取手数料など諸経費を差し引く前の金額です。

売却を受託した事業者は、売り手の住所や氏名、マイナンバーを記載した支払い調書を税務署に提出します。マイナンバーの記載も義務付けられていますので、事業者からマイナンバーが記載されている書類の提出を求められることがあるでしょう。

同様の手続きがプラチナの売却でもおこなわれていますが、銀の売却では必要ありません。金やプラチナは市場価格が高額のため支払い調書が作成されますが、銀はそれほど高額な取引にならないため現在のところ、法定調書の提出は義務付けられていません。

金の譲渡益に関する法律は非常に流動的です。
最新の情報は国税庁HP 『No.3161 金地金を売ったときの税金』をご覧ください。
https://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3161.htm

相続税・贈与税

金を相続したり贈与されたりすることもあります。この場合は相続税や贈与税が発生します。相続したり贈与されたりした金を売却すれば譲渡所得となり、金額によっては課税対象になります。

相続価格が高額なら課税対象

課税対象 相続税の基礎控除以上の金額なら、課税対象

金のインゴットや純金の金貨などを相続・贈与された場合、相続税・贈与税の対象になります。亡くなった方から財産を受け取った全員の課税価格が基礎控除額を超える場合は相続税が発生します。
逆に受け取った遺産の総額が基礎控除額以下の場合は、相続税はありません。

相続で受け継いだ金貨やインゴットを売却するときは、譲渡所得になります。所有期間は以前の所有者の期間を引き継ぐことになり、損益の計算は遺産や贈与として受け取った時の金価格と売却金額との差額で計算されます。
金の評価額は、前の所有者の死亡日の時価で計算されます。

ちなみに相続で金を残すのと生前贈与で金を譲渡するのでは、贈与のほうが節税になると言われます。
相続の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人数」。それ以上は課税されます。
贈与税は年間110万円までは非課税です。単純計算で、毎年110万円の金を贈与していき、10年たてば1100万円を非課税で譲渡したことになります。

子供や孫に財産を上手に残したいと考える人は、早い段階から生前贈与を始めるケースが多いようです。

売却した際に損失が出た場合は?

金の売却では、必ずしも譲渡益が出るとは限りません。では、損失が出た場合の税金はどうなるのでしょうか。

結論から言うと

売却した際に損失が出た場合の税金
損失が出た場合は、課税対象にならない
他の雑所得・譲渡所得とあわせ、損益通算することができる

金の譲渡所得のマイナス分を、他の雑所得・譲渡所得で補填することができるのです。

1.譲渡所得の損失

金の譲渡所得の損益は、「同一年内の他の譲渡所得と損益通算」できます。同一年内とは、1月~12月です。
ただし損益通算できる所得は「譲渡所得」に限られ、その範囲内だけの控除です。ほかの所得とは通算することはできません。

2.雑所得の損失

税務署から雑所得と認められた所得に対しても、「同一年内に、他の雑所得がと損益通算する」ことができます。雑所得の範囲内だけで損益通算が可能。
つまり、給料など他の区分の所得とは損益通算できません。

3.事業所得の損失

事業所得の場合、金の譲渡所得の損益は「同一年内の他の所得と損益通算」できます。譲渡所得や雑所得と大きく違う点は2つです。

  1. 所得の種別にかかわらず、損益通算できる
  2. 青色申告をしている場合は、純損失を翌年以降3年間の繰越控除できる
    および前年への繰り戻し還付ができる

とくに青色申告で3年間の繰り越し控除ができるのは大きなメリットです。

金の売却は、売るまえに税金の計算を

金は非常に高額な貴金属です。インゴットや地金型金貨を売却するときは、売却前にいくら課税されるのか、確認しておきましょう。
金の譲渡益にかかる税金は以下の3つです。

  1. 譲渡所得に対する税金
  2. 雑所得・事業所得に対する税金
  3. 金貯蓄口座などからの収益に対する税金

基本的には1年間の譲渡益が50万円を超えると特別控除の枠を超えますから、課税される可能性があります。
しかし長期保有していた金なら、譲渡益が高額になっても課税対象にならないことも考えられます。売却前にしっかりとシミュレーションしておくことをお勧めします。

金を購入した時期が分からない、購入時の領収書や明細書をなくしてしまい取得金額が不明、相続で受け取った金を売却しようと思うが、どうしたらいいのかわからない……と言う場合は、貴金属の買取業者に相談してみませんか。
売却後の税金がわかれば、いつ売るかのタイミングが読めてくるでしょう。