珊瑚の産地やグレード、石言葉について

サンゴの指輪

3月の誕生石として落ち着いた味わいのある珊瑚。古くから日本人に愛されてきた宝石の一つです。富や財力をもたらすと言われており、日本はもちろん中華圏を中心に東アジアでは絶大な人気を誇ります。中国では富裕層を中心に破格な値段で取り引きされていることからもよくわかります。

珊瑚はヨーロッパでも古代から宝飾品や壁画のモチーフとして使われてきました。古代ローマの遺跡に残された壁画には財運や魔除けを象徴するものとして珊瑚が描かれています。これは珊瑚の赤を見た古代人が想像した神話の影響が見られます。髪の毛が毒蛇で出来ていることで有名なギリシャ神話のメデューサが戦いによって流した血が珊瑚に変わったという物語が伝わっています。また十字架で贖罪したイエスの流した血と珊瑚が結びつけられて宗教的な意味合いも持ちました。悪神のメデューサを封印したり、罪を背負って十字架に架けられたキリストにあやかって魔除けのアイテムとして珊瑚が捉えられるようになり、やがて豊穣にもつながるとされたのです。

イタリアやフランスをはじめヨーロッパでは現在でも珊瑚に幸運や健康、安産の思いを寄せて珊瑚を身につける習慣を残しています。

日本では奈良時代に珊瑚が渡来したことが正倉院品物からも明らかになっています。チベット仏教では珊瑚を魔除けとして使っていることから、日本に伝えられた背景には仏教伝来との関わりが強いといわれています。

珊瑚の産地について

珊瑚の産地と言えば有史以来、地中海産が非常に有名でした。サルジと呼ばれる地中海珊瑚はイタリア周辺の浅瀬で成長します。深海の珊瑚に比べると大きさはありませんが、採取しやすい珊瑚の中では優れた赤色で人気があります。

現在、世界的な産地といえば日本です。明治に入ってから日本近海での採掘が本格化しました。とくに土佐沖は一大産地となっており、高知県の主要な産業の一つになっているほどです。高知を始め日本近海では赤珊瑚や桃色珊瑚が多く採取されています。とくに赤珊瑚は赤黒いほど高級とされており、かつて盛んに輸出されました。現在では非常に数が少なくなっているため、桃色珊瑚がアクセサリーや工芸品の材料の主流となっています。なお、桃色珊瑚の仲間に今では採取がなくなってしまい幻とされる本ボケ珊瑚があります。

近年、珊瑚漁で話題になっているのはピンクや白珊瑚です。東シナ海からハワイ沖という広い範囲に生息しています。赤や桃色がメインの珊瑚と違って、ピンクと白が混ざり合ったり、白がメインの色合いが特徴です。珊瑚というと赤いほど良いというイメージがありますが、白珊瑚に限っては象牙色が強いほど高い評価を受けます。

珊瑚の性質

その姿から珊瑚を海底で育つ植物や樹木と思っている人がいますが、実際は動物です。長らく実態が明らかではありませんでしたが、18世紀半ばに珊瑚虫といわれる虫であると突き止めらました。

珊瑚と聞くとテレビの旅番組でよく南の海でスキューバーダイビングに映っている珊瑚礁を思い浮かべるかもしれません。珊瑚という大きなカテゴリがありますが、珊瑚礁と宝石で使われる珊瑚は分類が異なります。なんと珊瑚虫の触手の数によって分けられており、触手6本は珊瑚礁、8本が宝石珊瑚です。なぜ宝石珊瑚が貴重なのでしょうか。美しさはもちろんですが、浅瀬にあって成長の早い珊瑚礁と比べ、深海に生息して採取が難しいこと、たった1センチ大きくなるのに数十年掛かることなどが大きな要因です。

珊瑚は回遊魚のように潮の流れが速い場所になるほど品質が高くなります。潮の流れの力を受けると珊瑚が鍛えられて姿がより美しくなるためです。実は宝石珊瑚には芯となる原木があります。珊瑚虫は原木の周囲に集まって漆を上塗りしていくように大きくなります。しかも動物としての寿命が限られているのも珊瑚が他の宝石と大きく異なる点です。鉱物と違って、宝石珊瑚はいずれ粉々に崩れ、砂として海底に返ります。

珊瑚の石言葉など

ヨーロッパで豊穣や安産のシンボルとされてきた珊瑚は現在でも、「成長」「家内安全」「長寿」「無病息災」「幸福」といった豊かなイメージを与えられています。

西洋では魔除けとして愛されており、旅行や移動の御守りとしても人気です。また、母の愛を連想させることから安産や育児の御守りアイテムとしても身につけられます。

赤い珊瑚は健康アップとやる気、イマジネーションを高め、ピンク珊瑚は優しさや愛情を引き出します。また白珊瑚はピュアで控えめな奉仕の精神を象徴します。

結婚35年目の節目に夫婦で贈る風習も伝わっています。

珊瑚の保存方法や注意点

カルシウムが主な成分として形成されている珊瑚は、汗に弱い特徴があります。硫黄をはじめ温泉の泉質も珊瑚の光沢を曇らせるので注意します。また、高温の状態が続くと脆くなりやすいため直射日光や熱源の近くは避けましょう。珊瑚の硬さはダイヤモンドやルビーといった他の宝石に比べるとそれほど強度はありません。強い衝撃や摩擦はキズや破損につながります。丁寧に扱いましょう。

身につけた後は、柔らかい布で珊瑚全体を軽く乾拭きします。汗をよくかいたときは少し布を水で湿らせて水拭き後、乾拭きします。珊瑚は適度な湿度が必要です。ジュエリーボックスでの保管は乾燥剤は使わないことがポイントです。

珊瑚の価値(グレード)について

珊瑚でもっとも人気なのは土佐沖の赤珊瑚です。色のポイントは赤みの深いものほど高級だということ。最高級品になると「血珊瑚」という別称も持っているほどでオックスブラッドに近いほど高値で評価されます。また、ツヤが鮮やかで光沢があること、大きさのほか、「フ」と呼ばれる白い部分が少ないことが大切です。ただ、「フ」入りは日本産の赤珊瑚である証拠にもなります。

一方、「ヒ」と呼ばれる筋のようなヒビが入ると評価が下がってしまいます。天然珊瑚の宿命で仕方がない面もありますが、チェックしておきましょう。