宝石の種類

宝石の種類

人類の長い歴史の中で、人々の憧れを集めてきた宝石。
リングやネックレスなど多彩なデザインのジュエリーが作られ、今も人気は衰えません。そして手元に宝石があれば他の宝石と組み合わせたくなるものです。
ここでは多種多様な宝石の中から12種類を選んで、次の4つの点からご紹介しましょう。

  1. 鉱物の種類としての「宝石」
  2. 「五大宝石」の5種類
  3. 「有機宝石」の2種類
  4. 「ダイヤモンドより希少な宝石」の5種類

「五大宝石」とよばれるダイヤモンドやブルーサファイア、ルビーなどはよく知られていますが、超レア種のカラーストーンのなかには、あまり知られていない天然石もあります。

これから宝石を買う、宝石の査定・買取を依頼してみたいという方は、宝石の基本的な知識を持っておくといいでしょう。

1.鉱物の種類としての「宝石」

鉱物の種類としての「宝石」

「宝石」は、鉱物と呼ばれる石の一種です。ここでは、次の2点から、宝石についてご紹介しましょう。

  1. 「宝石」=美しさ・耐久性・希少価値のある鉱物
  2. 天然石でない宝石

まぶしく輝く宝石は、岩石と同じ天然石です。原石が人間の手でカットされ、研磨されてはじめて、高価なリングなどの宝飾品へと変身します。

また天然石でも科学的な処理をほどこしてあるものや、天然石ではない合成石などもありますので、種類別に覚えておきましょう。

1.宝石=美しさ・耐久性・希少価値のある鉱物

宝石にはさまざまな定義がありますが、基本は次の3点です。

  1. 美しいこと
  2. 耐久性があること
  3. 希少性があること

「美しいこと・希少性」の2点はわかりやすい基準ですが「耐久性」とはどういうことでしょうか?
実は、宝石は「経年劣化に耐える」点も非常に重要なのです。

宝石の価値は光沢やカラー、透明度などで決まります。しかしいくら高品質であっても、割れやすく壊れやすくては、リングなどのジュエリーとして長く使うことができません。天然石として、ある程度の「硬度」が必要になってくるのです。

一般的に宝石といわれる「貴石」は「モース硬度7以上」とされています。
「モース硬度」は石表面の傷つきやすさを見るもので、「硬度7」にあるのは、水晶やトルマリン、翡翠などです。宝石にやすりをかけるとわずかに傷がつくレベルの鉱物で、「硬度8.5」だとエメラルドが、「硬度9」だとルビーやサファイアが含まれます。

「モース硬度7」前後の宝石は、ガーネットやオパールなど「半貴石」と呼ばれるものです。
「貴石」と「半貴石」の境界線は明確に決まっていませんが、目安として「モース硬度7」以上は宝石になるとされています。

2.天然石でない宝石

宝石には、「天然石か、天然石でないか」という区分もあります。この場合、以下の3種類が主な区分です。

  1. 天然石
  2. 処理宝石
  3. 合成石

「天然石」と呼ばれるのは、自然界で産出される鉱物のうち、人間の手で「カット・研磨だけ」をほどこしたものです。

カットは、宝石から光沢と色を引き出すために欠かせない作業で、原石から宝石となるべく形に決め、石をスライスしたりけずったりしていきます。宝石はカットを経て、初めてジュエリーにセットできる商品になります。

「処理宝石」は、自然界で産出される宝石に「処理」をくわえた宝石のことです。
ルビーやサファイアなど「コランダム」というグループの鉱物は、加熱処理をおこなうのが一般的。

コランダムの原石は結晶に褐色が混じっていたり、色がくすんでいたりしているためそのままでは宝石としては使いにくいため、1000~2000度で加熱して透明感を出します。

これが「処理」となり、加熱後の宝石は「処理宝石」です。「処理宝石」は、処理後も天然宝石と認められます。
エメラルドのほとんどは透明度を上げるためオイルにひたす処理がされていますが、自然から産出された石なので、区分としては「天然エメラルド」です。

「合成石」は、天然石と同じ成分のものを処理して人工的に作った石のこと。非常に美しく、成分は同じですが、天然石ではないために宝石ではありません。

最近は合成石の製造技術が向上し、天然石と合成石を見分けるのは非常に困難です。見分けたいときは、信頼のおける宝石の「鑑別機関」に依頼するのがいいでしょう。

2.「五大宝石」の5種類

「五大宝石」の5種類

それでは、具体的におもな宝石の種類を見ていきましょう。
まず、宝石には「五大宝石」と呼ばれるものが有名です。美しさも希少価値もあり、硬度も高い宝石5種類のことです。

  1. ダイヤモンド
  2. ルビー
  3. サファイア
  4. エメラルド
  5. アレキサンドライト

最初の4種類の石は知名度が高くても、「アレキサンドライト」は、あまり知られていないかもしれません。自然光と白熱光の下では色が異なるという不思議なカラーストーンです。

1.ダイヤモンド

1.ダイヤモンドは約99.95%の炭素でできている宝石

「ダイヤモンド」は、世界で一番硬いと言われる宝石です。ダイヤモンドを削れる物質はダイヤモンドしかないと言われ、宝石としても最高の硬度を持っています。

ダイヤモンドが硬い理由は「等軸配列で結晶化した炭素」でできた鉱物だからです。炭素原子の規則正しい配列が、ダイヤモンドに地上で最も高い硬度をもたらします。

また、ダイヤモンドは構成元素がほぼ一種類だけという非常に珍しい宝石です。
一般的に、宝石は2種類以上の元素が組み合わさって出来ています。たとえば、緑色が鮮やかなエメラルドはおもにシリコン・アルミニウム・酵素・ベリリウムの4つでできており、この「ベリリウム」元素が非常に珍しい元素です。

一方、ダイヤモンドは約99.95%の「炭素」でできています。
残りの0.05%は25種類以上の不純物元素で、わずかな元素の違いが、それぞれのダイヤモンド原石の色や形の違いを作っているのです。

2.ダイヤモンドは「4C」で品質評価

ダイヤモンドの価値は、G.I.A(米国宝石学会)が定めた「品質評価国際基準」の「4C」によって決まります。ここでは、「4C」について簡単に悦明をしましょう。

  1. カラット/Carat
  2. カラー/Color
  3. カット/Cut
  4. クラリティ/Clarity

「カラット」は、ダイヤモンドの質量(重さ)をあらわすもの。ダイヤが大きいほど質量が大きくなるため、カラット数が大きい=重い=サイズも大きいということになります。

0.1カラットのダイヤモンドは約3ミリの大きさですが、サイズはカット方法などで大きく変わってきますので、評価の一つにすぎません。

ジュエリーとしてのダイヤモンドで重要なのが、「カラ―とカット」です。
特にカットはダイヤモンドのスタイルと価格を決める重要なポイント。原石の特徴を見抜き、形を決めて面を取り、輪郭をつくっていくという、職人の力量とセンスがものをいう場面です。

カラーは無色の「D」が最上級。
最後の「クラリティ」とは透明度のことです。ダイヤモンドはとくに透明度が重視される宝石ですから、専門家が適正な光の下で10倍ルーペを使い、石の内部・外部の内包物やキズをチェックしてグレードがきまります。
クラリティの最上級「FLクラス」は内包物も傷もない状態。最後のグレード「Iクラス」では、石内部の内包物が肉眼でも見えるレベルになります。

それでもカットしだいで非常に美しいジュエリーになるのが、ダイヤモンドの魅力です。

2.ルビー

ルビー」は、サファイアと同じ「コランダム」という鉱物からできている宝石です。本来は無色透明な「コランダム」鉱石にクロムという金属元素が混入すると赤いルビーに変化します。

7月の誕生石であり、結婚40周年の「ルビー婚」に贈られるなど、ジュエリーとしても人気の高い石。
主な産地はスリランカ、タイ、ベトナムで、なかでも「ミャンマー モゴク産」のルビーは最上級として高価な宝石です。通常、ルビーは透明感を上げるために加熱処理をしますが、モゴク産ルビーは加熱する必要がありません。そのままで透明感があるからです。

そのためモゴク産ルビーは処理なしの「天然石ルビー」として、買取価格も非常に高額。カラーやカットしだいでは、ダイヤモンドを上まわる商品として取引されています。

3.サファイア

サファイア」は、ルビーと同じ種類の鉱物「コランダム」の宝石です。
無色透明なコランダムのうち、赤く変化したものはルビーに、それ以外の色はサファイアに分かれます。そのため、サファイアは非常に豊富なカラーバリエーションのある宝石。有名な「ブルーサファイア」のほかに、ルビーの赤みが薄くなった「ピンクサファイア」や「バイオレットサファイア」「イエローサファイア」などもあります。

どれもリングなどのジュエリー素材として人気で、最近ではブルー以外のカラーサファイアの価格が上昇しつつあります。

ちなみにサファイアは結晶するときに不純物が混じってしまうことが多く、グレードの高い原石はあまり採掘されません。天然石にさまざまな処理をほどこしてから商品とすることの多い宝石です。

4.エメラルド

エメラルド」は、ベリルという種類の鉱物からできる宝石です。美しいグリーンカラーが特徴で、ジュエリーとして、とても人気があります。

まれに「キャッツアイ」といって、石の中に猫の目のような光が入っているものが採掘され、希少価値から買取価格が非常に高額。グリーンの石の中に光が入り、エメラルドの美しさがぐっと引き立ちます。

ただしエメラルドは衝撃に弱いため、ワレや欠けができやすいので注意しましょう。「モース硬度8.5」と硬い宝石で、日常的に着用できる硬度はありますが、硬いものにぶつけないことが大事です。

リングなどで使う場合は、とくに取り扱いを丁寧にしましょう。
また、ほとんどのエメラルドが「オイル処理」されています。そのため水につけるのはNG。汚れが気になる時は水洗いしないで、柔らかい乾いた布でふくのがベストです。

5.アレキサンドライト

「アレキサンドライト」は、「クリソベリル」という鉱物の変種です。
いわゆる「光学効果石」というカラーストーンで、宝石が浴びている光の種類によって、2種類の色に見えるという特徴があります。

クリソベリルからできる宝石ははちみつ色、グリーン、オレンジと多様です。結晶化の途中でクロム元素が入ると変種のアレキサンドライトができ、光を浴びたときに石が黄橙系の色を吸収して、青緑・赤紫の色を反射するようになります。反射する色は光の種類によって変わり、太陽光または蛍光灯の下でみると青緑色に見え、人工白熱光の下では赤紫色に見えるのが特徴です。

この貴重な「光学効果」はアレキサンドライトの自然な特質。そのため、加熱やオイルなど人工的な処理を施してしまうと変色しなくなり、価値が下がります。

そのため、アレキサンドライトはいっさいの処理をしない「天然石」のままジュエリーに加工する宝石です。
おもな産出地はスリランカやブラジル、インドなどですが、とくに有名なのがロシア産のアレキサンドライト。変色効果がすぐれ、希少価値から高額で売買されています。

4.「有機質宝石」の2種類

「有機質宝石」の2種類

「宝石」は基本的に鉱物=無機質です。しかし宝石のなかには動植物の組織が変化したものや、生物の特性を利用して作った「有機物」の宝石もあります。
ここでは「有機質宝石」の2種類をご紹介しましょう。

  1. 真珠
  2. 珊瑚

「有機質宝石」の魅力は、生物由来の柔らかさ、変化のある表情などです。ふるくから愛されてきた宝石でもあるので、ジュエリーとして手元に置いて、長く愛用しましょう。

1.真珠

真珠」は、真珠貝のなかで作られる宝石です。
アコヤガイやクロチョウガイ、カラスガイなの貝の内部に異物が入ると、異物を包み込むように球状の凝固物ができます。これが真珠です。

異物が偶然はいりこみ、真珠が出来上がったものを「天然真珠」といい、真珠のもとになる異物を人工的に挿入してできたものを「養殖真珠」といいます。

養殖真珠の製造は、1893年に日本の御木本幸吉(みきもとこうきち)が世界で初めて成功しました。それ以降、市場で取引されている真珠のほとんどは養殖真珠になり、日本は最大クラスの真珠輸出国のひとつです。

真珠の価値は、母貝の種類や球のサイズ、真珠層の厚さ(マキ)、光沢(テリ)、カラーで決まります。形はきれいな球形がいいとされますが、自然な歪みのある「バロック」もジュエリーとして珍重され、高価な真珠です。
色もいわゆる「真珠色」のクリームのほかに、ピンクやゴールド、ブルーなどがあり、用途や好みによって使い分けられています。

2.珊瑚

珊瑚(さんご)」は水深100メートル以上の深海に生息する「珊瑚虫(さんごちゅう)」という生きものからできる宝石です。

珊瑚虫の骨格は非常に硬く、モース硬度で言えば「硬度3.5」。人間の爪が「硬度2~2.5」ですから、爪より硬い骨格を磨き上げて作ったものが「珊瑚」という宝石になります。

ちなみに、宝石となる珊瑚は「八放珊瑚(はっぽうさんご)」の集合体で、海岸ぞいにできる珊瑚「六放珊瑚」とは別種類。「八放珊瑚」は小さな海中の浮遊物などを食べて成長し、「血赤」とよばれる美しい赤い色が特徴です。

実は珊瑚は日本の特産品でもあり、とくに高知県の伝統産業として知られています。高知県の土佐沖でとれる「桃色珊瑚」と「赤珊瑚」は、カラー・品質ともに最上級と言われる高価な珊瑚です。

5.「希少価値がある宝石」5種類

「希少価値がある宝石」5種類

世界中でもっとも価値があり、高額といわれる宝石はダイヤモンドですが、宝石の世界にはダイヤ以上に「希少価値」がある鉱物も存在します。
ここでは、非常に珍しい宝石5種類をご紹介しましょう。

  1. ターフェアイト
  2. マスグラバイト
  3. レッド・ベリル
  4. ベニトアイト
  5. レッドダイヤモンド

どれも名前を聞いたことがないかもしれませんが、あまり見つからない種類の宝石で、小さくても数百万円を超えることもある、希少種なのです。

1.ターフェアイト

「ターフェアイト」は、1945年に発見された非常に珍しい宝石です。青みのつよい紫色をしていて、産地は主にスリランカ。ほかにタンザニアなどで見つかります。

ターフェアイトは「スピネル」という宝石によく似た性質を持っており、最初のターフェアイトは「スピネル」としてカット・研磨加工済みの状態で見つかりました。

スピネルとは屈折が異なるということで調べたところ、別種の鉱物であると判明したという経緯があります。
現在ではターフェアイトとスピネルは「屈折の違い」で鑑別され、ターフェアイトは光を通した時にふたつの光線に分かれる「複屈折」で、スピネルは「単屈折」の宝石です。

状態の良いターフェアイトは1カラットあたり400万円以上すると言われ、実はダイヤモンド以上に価格が高い宝石です。

2.マスグラバイト

「マスグラバイト」は、ターフェアイトに含まれる宝石です。色は紫色、淡いピンク、クリアなどがあります。主な産地はスリランカやミャンマーです。

ターフェアイトそのものが希少な種類の宝石ですが、さらにその中から見つかるのがマスグラバイト。マスグラバイトとターフェアイトはほとんど同じ性質を持つ宝石で、現在は「ラマン分光法」などの最先端技術を用いて鑑別します。

透明感が高くてカラーも美しいため、リングなどのジュエリーにはぴったりの天然石なのですが、数が少ないうえに、宝石として使えるグレードの原石はまれにしか産出されません。

大粒のものは非常にめずらしく、1カラット以上のマスグラバイトは貴重品。価格は0.5カラットで約50万円という高価な宝石です。

3.レッド・ベリル

「レッド・ベリル」は、赤色が美しい宝石です。「ベリル」という鉱物からできる宝石で、色は深みのある赤色をしています。

ベリル系列の宝石は混入する不純物の種類により、カラーが変わるのが特徴。たとえばクロムが混入すると「エメラルド」に、マンガンが混入すると「レッド・ベリル」になります。そのため、レッド・ベリルはかつて「レッドエメラルド」と呼ばれていたこともありますが、現在では「レッド・ベリル」で定着しました。

おもな産地はアメリカのユタ州とその周辺です。
じつは、レッド・ベリルはアメリカのユタ州でしか見つからない宝石。しかも1904年の発見以来、すでに掘り尽くされてしまったのでは?といわれるほど、今ではめずらしい石なのです。

数が少ないうえに、大きな結晶の原石はほとんどありません。市場に出るものは0.1~0.3カラットほどのサイズが一般的で、0.4カラット以上は大粒だと言われます。ジュエリーとして使える0.4カラットのルース天然石の価格が30万円を超えるなど、価値は上がる一方です。

4.ベニトアイト

「ベニトアイト」も、アメリカの希少な宝石です。
天然の状態のベニトアイトはサファイアのようなブルーカラーの鉱物で、ダイヤモンドとほぼ同じレベルの輝きがあります。また「多色性」という特質があるため、ひとつの石が、見る角度によってブルーから紫までに変化する美しい石です。

この宝石は、アメリカのカリフォルニア州の「サンベニト鉱山」だけでとれるのですが、この鉱山はすで閉山。新しく採掘されないために、現在市場に流通しているものとストック分だけが残っている石なのです。

色はブルーがほとんどで、まれにクリア、パープル、ブルーグリーンがあります。ジュエリーで見かけるオレンジやピンク系のベニトアイトは、原石に加熱処理がほどこされたものです。

天然のベニトアイトも小粒なものが多く、1カラット以上の石は「大粒」と区分されます。大粒のものは石のみのルース価格で100万円以上することもめずらしくありません。

5.レッドダイヤモンド

「レッドダイヤモンド」は、カラーダイヤと呼ばれる種類のダイヤモンドです。

ダイヤモンドは通常、無色透明のDカラーが最上級ですが、レッドダイヤモンドは別格。世界でも30個ほどしかないと言われており、一般の市場には出回りません。クリスティーズやサザビーズといった大手オークションで取引され、買取価格は億単位という、けた外れの天然石です。

レッドダイヤモンドは、ピンクダイヤモンドの色が濃くなったもの。さまざまな「赤」に分けられ、最上級は「ファンシーレッド」というあざやかな赤色で、ほかに紫がかった赤、オレンジが入った赤もあります。

そもそも、ピンクダイヤモンド自体が希少なので、レッドダイヤモンドは価値のつけようがないレベルの宝石。ジュエリーとして見ることができたら幸運という非常に珍しいものです。