作者は誰? 掛け軸の落款やサインが読めないときの対処法

作者は誰? 掛け軸の落款やサインが読めないときの対処法

「家族の遺品を整理していたら、押し入れからたくさんの掛け軸を発見! 誰の作品か知りたいけれど、落款やサインが読めない・・・」そんな人は少なくありません。

この記事では、落款やサインで掛け軸の作者を調べる方法をご紹介します。知らなければ、高価な掛け軸を処分してしまう可能性も。故人の大切な遺品の価値を知るためにも、こちらで知識をつけておきましょう。

掛け軸の落款とは?署名やサインとは違う?

落款や署名から作者がわかる

落款、署名

掛け軸には、必ずと言っていいほど落款(らっかん)と署名があります。これは、作者を特定するためのサインのようなもので、その掛け軸を誰が手掛けたのか知るためにも重要なものです。

落款は印鑑のようなもので、掛け軸の絵の隅の方に押してあります。

署名は、筆でサラサラと、こちらも絵の隅の方に書かれていることがほとんどです。掛け軸の場合は、落款だけ、署名だけというケースもありますし、落款と署名のどちらも記してあることもあります。

落款は複数押してあることも

落款は、実は1つだけ押してあるとは限りません。落款がいくつもある場合は、2〜3の落款を並べて押してある掛け軸もあります。

例えば、私たちが普段使う印鑑などは、「誰が」を表すためのものです。しかし、掛け軸の落款は「誰が」だけではなく、「いつ」や「どこ」「なぜ」「誰に」など、さまざまな事柄を表していることがあります。

特に中国の古い時代の掛け軸には、たくさんの落款を押した作品がよく見られるといいます。

このため、もしあなたが所有する掛け軸に複数の落款があったら、「誰が書いたのか」を知るために、「どの落款が作者を示すものか」をまず調べなければいけません。

掛け軸の落款や署名を調べる方法

図書館(辞書や図録)で調べる

図書館で調べる

落款や署名は辞書、図録などで調べることができます。街の書店ではなかなかこれらの書籍は見つかりませんので、もし、辞書や図録を調べたい場合は、大きな図書館などに行くといいでしょう。

インターネットで調べる

最近では、美術品の落款や署名などを集めたサイトもあります。ただし、作家の名前などがわかっていないと調べにくく、会員登録などが必要など、素人が簡単に落款を調べるにはハードルが高いのが現状です。

ただ、もし有名作家の作品であれば、ネット上に掲載された作品画像などから、落款を見比べるくらいはできるかもしれません。

それぞれのメリットデメリット

図書館にある書籍は、ネットの情報に比べて信憑性があります。これは大きなメリットです。

例えば、辞書や図録は、掛け軸などを研究している学者がまとめた書籍であることもあります。学術論文などから探すこともできるので、質の高い情報が手に入ると言えるでしょう。

一方、ネット上の画像は画質が悪いものも多く、情報も誰が書いたものかはわかりません。そのため、本物かどうかを見極める材料にはならず、デメリットということもできます。

ただ、図書館へは直接行かなければいけません。それが面倒な人は、デメリットに感じるでしょう。インターネット検索は手軽ですので、その点でメリットがあります。

掛け軸の箱書きで作者が判明することも

掛け軸の箱の落款と署名

掛け軸本体で読み取れなくても箱の署名でわかる場合がある

古い掛け軸や状態が悪い掛け軸の場合は、掛け軸本体の落款や署名がかすれて読み取れないことがあります。

その場合は、掛け軸が保管されていた木箱や、同梱されていた書類などを見てみましょう。そこに落款や名前の記述、署名があれば、それが掛け軸の作者を示す証拠となります。

掛け軸は作者だけでなく付属品や状態も大切に

掛け軸の価値は「作者に左右される」と、思っていませんか? もちろん、それは間違いではありません。しかし、作者だけに左右されるわけではありません。

掛け軸の価値は、作者だけなく付属品にも左右されます。桐箱などに入っていれば、その桐箱がどんなふうに保管されているかも価値を左右するのです。

掛け軸に限らず、骨董品や美術品は、もともとある付属品が査定額アップにつながります。査定額を引き上げたいと考えるなら、なるべく付属品も丁寧に扱いましょう。

掛け軸だけを大事にして、木箱がカビてしまったり、鑑定書が破れてシミになっていたりすれば、査定額が低くなってしまう恐れもあります。

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掛け軸の作者や価値を明らかにするには専門家に相談を

掛け軸の作者や価値を明らかにするには専門家に相談を

素人判断で「無名」と判断するのはもったいない

この記事の中で作者を見極めるための落款と署名の調べ方をご紹介しました。しかし、中には落款や署名がなかったり、汚れていて特定できなかったりと、誰の作品がハッキリしなかったという人もいると思います。

ただ、それで「無名だから価値がない」と思うのは大間違い!

実は掛け軸は、歴史的に古いものであれば、無名でも高値で売買されることがあるのです。

無名のものだから価値がないと素人が判断するのは、まず、やめたほうがいいです。「もしかしたら高価なものかも」と、思って、大事に扱うようにしてください。

美術商や骨董品店などに相談してみましょう

本当にあなたの掛け軸の価値を知りたくなったら、プロの鑑定士に相談してみるのが一番です。

美術商や骨董品店などに持ち込めば、本物かどうか、誰の作品かどうか、いくらくらいの価値があるのかまでわかります。

鑑定料は有料のところもあるので、できれば無料の業者を利用すると安心です。