絵画の種類や技法についての豆知識

絵画の種類や技法についての豆知識

絵画は、その描き方によってさまざまな印象を与えてくれる芸術です。
先人たちは時にいにしえの技法を研究し、時にこれまでになかった新たな技法を確立し、絵画の世界を豊かにしてきました。

お手持ちの絵画がどのような技法で描かれているか、どんな種類か判別しやすいよう、代表的な絵画の技法や種類についての豆知識をまとめてみました。

世界の名だたる画家が名作を描いた!絵画技法

では、さっそく絵画技法についてみていきましょう。
解説する絵画技法について代表作を挙げるのは難しいことですが、ここでは教科書に載っているような非常に著名な作品を中心に紹介していきます。

日本画

日本で伝統的に培われた技法で表現されている絵画の総称です。岩絵具や和紙、絹など、日本で発達してきた素材や技術が使われています。

定義そのものはあいまいで、明治時代に入ってきた油絵(洋画)と区別するために生まれた比較的新しい概念でした。ですから、厳密には江戸期以前のものは日本画とは呼びません。

制作には主に岩絵具を用いるのが日本画の特徴です。鉱石鉱物を砕いて溶いて使う岩絵具は色が違うと性質も若干異なるため、それぞれの色に応じた技術が必要になります。

洋画

「鮭」高橋由一「鮭」高橋由一(1877年頃)

主に油絵や水彩画など、西洋で発達した様式を用いて制作された絵画を表します。
洋画という言葉は明治時代に西洋から油絵が入ってきたことにより、日本の絵画と区別する必要から生まれました。ですから日本特有の言葉であり、西洋において洋画という表現は用いません。

油絵(油彩画)は、顔料と油成分から作られた絵の具で、塗り重ねることで重厚な質感と多彩な表現力ができる描画技法です。洋画のメインともいえる技法で、古来から様々な画家が多くの表現法や手法を作り出してきました。

水彩画は絵の具を水で溶いて塗る描画技法で、広く言えば旧石器時代の洞窟画にまでさかのぼることができるほど古い歴史をもっています。水のにじみを利用した淡く柔らかな表現に適しており、油絵には難しい透明感を演出します。

油彩(油画・油絵)

「キス」グスタフ・クリムト「キス」グスタフ・クリムト(1907-1908年)

「油彩」は、油絵具を使用する絵画技法です。油絵具は、亜麻仁油などで岩石や鉱物などの顔料粉末をねって作ります。使用するときは絵の具を揮発性油やワニスでといてから、麻や綿を木枠に張ったキャンバスに絵を描きます。

キャンバスや紙、金属板などあらゆるものに描かれ、単色画、陰影画、多色画、肖像画、静物画、風刺画、聖画、壁画など描かれる題材や場所によってさまざまな種類に分類することができます。
キャンバスに絵具を平たく塗っていく平塗り以外にも、物理的な立体感の出る「モデリング」、透明性の高い絵具を重ねることで独特の効果を出すグレーズなどさまざまな技法を駆使して描きます。後に解説しているコラージュと組み合わせて作品が描かれることもあります。

油彩の技法は、15世紀のフランドルの画家ヤン・ファン・エイクが確立したと言われており、ルネサンス以降の西洋絵画は、壁画を除き、ほとんどが油彩で制作されたと言われているほどメジャーな技法です。油彩の特徴は、発色が鮮やかであることと、油絵具の重ね塗りをすることで画面に重厚感を出せること、そして乾燥に時間がかかることです。

乾燥に時間がかかるのはデメリットのようですが、油絵具がゆっくりと乾くあいだに不要な絵の具を削ったり加筆したりすることができ、修正も可能になるため大きなメリットでもあります。
油彩には薄塗りや厚塗り、ぼかしなど多様な表現方法があり、重ね塗りをしても色彩が濁ることがありません。
厚塗りの技法は、油絵具独特のつやを生かしたモノです。油絵具の特製である粘着性のおかげで、分厚く塗っても絵の具が崩れません。筆の微妙なタッチを残したまま、絵の具を乾燥させることもできるのです。

水彩(ガッシュ)

「野うさぎ」アルブレヒト・デューラー「野うさぎ」アルブレヒト・デューラー(1502年)

「赤いチョッキの少年」ポール・セザンヌ「赤いチョッキの少年」ポール・セザンヌ(1890年)

「水彩」は、水で溶かす絵の具を使用する絵画技法です。
水彩絵具は、ウォーターカラーという透明水彩絵具と、ガッシュと呼ばれる不透明水彩絵具に大きく分けることができます。
油彩画はキャンバスをはじめあらゆる媒体に描くことができますが、水彩画の多くは水彩紙と呼ばれる専用紙を用いて描くことがほとんどです。
絵具と水の量によってニュアンスが異なり、薄く溶いた絵具を薄く塗ってにじみの効果を生み出すウォッシュ、互いの色が溶け出さないように異なるカラーを重ねていくオーバーレイング、あえてかすれさせてパステルのような風合いを出すドライブラシなど、さまざまなテクニックを活用して作品を描いていきます。

水彩のなかでも、不透明な水彩絵の具を使用する技法を「ガッシュ」「グワッシュ」と呼びます。ガッシュの歴史は古く、古代エジプトの時代にはすでに顔料をトラガカント・ガムか蜂蜜で練り合わせた絵の具で、ガッシュが描かれていました。中世時代の西洋絵画では手書きの彩飾写本にガッシュがよく使われており、16〜18世紀の細密画には、透明水彩とガッシュを併用しているものも多数あります。

ガッシュの特徴は、描きあがってから絵の具が乾くと明るい色調になり、しっとりした雰囲気が出ることです。またガッシュの不透明絵具は、下に塗った色を気にせずにべつの色を重ねられます。重ね塗りや厚塗りにも適していて塗りむらも出にくいため、大きな絵画を描くのに適した技法です。

水墨画

御存知の通り、墨一色の濃淡と強弱のみで表現する絵画です。

7世紀から10世紀にかけて中国を統治していた唐の時代に成立したといわれており、日本にも鎌倉時代に伝わりました。
水墨画と呼ばれるのは中国風の技法を用いている作品を指し、墨で描いてあればすべて水墨画と呼ばれるわけではありません。

中国では山水画の技法として発達した水墨画は、日本では禅宗の輸入とともに広まったため、仏教や道教の人物画や花鳥画から始まりました。
室町時代に入ると山水画も描かれるようになります。漢詩と合わせて描かれた詩画軸もこの頃にうまれた作風です。

版画

「犀(木版画)」アルブレヒト・デューラー「犀(木版画)」アルブレヒト・デューラー(1515年)

「漁夫(木版画)」山本鼎「漁夫(木版画)」山本鼎(1904年)

版画は板に細工を施してインクや絵の具を塗り、紙に転写することで表現する絵画技法です。
大きく分けて凸版画、凹版画、平版画、孔版画の4種類があります。

凸版画は板の上に細工した出っ張り部分にインクをのせて、転写する方法です。木版画やコラグラフが該当し、日本の浮世絵は木版画のジャンルに入ります。
凹版画とは、板に傷をつけて細工し、インクを塗り広げた後に拭き取ります。その上に紙を敷き、凹部分に残ったインクを転写します。西洋美術ではもっとも用いられた版画手法で、ドライポイントやエッチングもこの手法に属します。

平版画はリトグラフとも呼ばれる手法です。専用の板に油分の強いチョークなどで描画し、板を水で濡らした上にインクをつけて、紙に水とインクを写し取ります。
孔版画は板に孔を開け、インクが通る部分と通らない部分を作ることで紙に絵を転写する技法です。シルクスクリーンはこの孔版画に位置づけられます。
木の板を彫刻して作るものを木版画、銅を腐食させて絵柄を構築するものを銅版画といいます。また、石を削って図柄を表現するものは石版画、布(メッシュ)を用いて図案を描くものはシルクスクリーンと呼ばれ、それぞれ制作方法が異なります。

イラストレーション

さまざまな商品や文字情報を象徴したり補完するために用いられるイラストレーションもまた、絵画の一種といえます。
包装デザイン、挿絵、扉絵、絵本、ポスター、グッズなどに用いられたイラストレーションの原画を、1つの作品として飾ることも珍しくありません。特に日本ではコミック原画なども人気があります。

現在では純粋な芸術作品(ファインアート)として発表されるイラストレーション作品も多く、現代アート(コンテンポラリーアート)の1分野といえるでしょう

テンペラ

「ジネヴラ・デステ」ピサネロ「ジネヴラ・デステ」ピサネロ(1440年頃)

「ヴィーナスの誕生」サンドロ・ボッティチェッリ「ヴィーナスの誕生」サンドロ・ボッティチェッリ(1485年頃)

「テンペラ」は、粉末にした顔料に卵黄を混ぜた絵の具を使用する技法です。卵黄だけでなくアラビアゴムやにかわなどを混ぜることもあり、油絵具が主流になるまで、テンペラはヨーロッパ絵画で主として使われていました。とくに初期ルネッサンスの、木の板に描いた絵画「板絵」にはテンペラが多用されており、イタリアでは15世紀末ごろまではテンペラが主流の技法でした。

テンペラの特徴は、比較的乾燥が早いこと。乾燥が早いために「ぼかし」や「大胆な筆致」を表現するのは難しいのですが、多少なら塗った後の修正もでき、何よりも色彩が明るいのです。また筆を使った繊細な描写も可能です。
テンペラは乾燥が早いという性質上、厚塗りをすると亀裂が入ってしまうので、ごくごく薄塗りで仕上げられます。薄塗りですが、とくに卵黄テンペラは変色がしにくく、5~600年たっても製作当時の色彩が残っています。

テンペラには、卵テンペラ、カゼインテンペラ、膠テンペラの3つがあり、西洋絵画では卵テンペラが多く用いられていました。膠テンペラは、水に弱く亀裂が生じやすいという弱点があるため、添加物をプラスするなどして使われます。
テンペラ画は、油彩画の技法が確立されてから一旦は下火となりましたが、20世紀に入ってからは油彩画とテンペラをミックスさせる混合技法が試みられるようになり、純粋なテンペラ画も再び描かれるようになりました。

フレスコ

「受胎告知」「受胎告知」(1437-46年頃)

「主の復活」「主の復活」

「フレスコ」は、しっくいで作った下地に下図を描き、しっくいが乾かないうちに顔料を使って絵を描いていく技法です。歴史の長い絵画技法であり、14~15世紀のイタリアでは壁画制作の主な技法のひとつでした。

フレスコは、漆喰が乾いていない時に描く湿式法と、やや耐久性に劣る乾式法、乾燥するのを遅くさせて取り組む半湿式法、異なる色彩で数層の漆喰を塗り重ね必要に応じて掻き落とすことで絵柄を浮き上がらせる掻き落とし法などの方法がとられていました。

フレスコの特徴は、一気に描き上げた絵であることです。フレスコ画の下地は2種類のしっくいで、まず砂を混ぜた粗いしっくいを塗り、そこに原寸大の下地を描いて、さらに細かいしっくいを塗ります。上に塗ったなめらかなしっくいの上に筆で絵を描いていくのですが、重要なのはしっくいが乾かないうちに仕上げてしまうことです。

しかも、一度塗った顔料はしっくいに染み込んでしまいますから塗り直しができません。
つまりフレスコ画は、しっくいが乾燥するまでの短時間で、完成後の絵を頭に入れながら正確に一気呵成に描き上げた絵画なのです。非常にむずかしく熟練の必要なテクニックですが、成功するとマットで素朴、微細な表現の明るい絵ができあがります。画家の技量が問われる技法だと言っていいでしょう。

パステル

「花の雲」オディロン・ルドン「花の雲」オディロン・ルドン(1903年)

「浴盤」エドガー・ドガ「浴盤」エドガー・ドガ(1886年)

「パステル」は、顔料をスティック状に固めたパステルという画材を使用する技法です。目の粗い画用紙や亜麻布などにパステルで絵を描くもので、16世紀のイタリアでおこり、18世紀にフランスで大流行しました。以後、さまざまな使用方法が編み出され、現在ではパステルをナイフなどで削って粉末状にし、スポンジで塗ったり人間の指を使って画面に塗ったりします。絵画だけでなく、デザインでも用いられる技法です。

パステルの特徴は、明るく柔らかいトーンです。同じ色を使っても水彩や油彩とは違う、独特のふんわりした雰囲気が醸し出されます。硬さの違うパステルを使い分けたり水彩と併用したりすると、また空気感の絵になるなど、自由度の非常に高い技法です。
ただしパステルはもともと粉末の画材を固めてあるものですから、画面上での固着力が弱いのがデメリット。作品を完成させた後はフィキサチーフなどで粉を定着させる必要があります。

クレヨンもパステルの一種で、比較的安価な画材のため、デッサンや下書きとして描かれるものも多いのが特徴です。
パステルを削って粉末状にし、スポンジや手を使って塗っていく技法が使われることもあります。

ペン画

挿絵「サロメ」オーブリー・ビアズリー挿絵「サロメ」オーブリー・ビアズリー(1894年)

挿絵「落穴と振子」ハリー・クラーク挿絵「落穴と振子」ハリー・クラーク(1919年)

「ペン画」は、ペンとインクを使用する技法です。描きたいものの形を線の組み合わせで描き出す技法で、絵画の世界ではレオナルド・ダ・ビンチ、デューラー、レンブラント、マチス、ピカソなどが好んで描きました。現代美術ではイラストレーション、デザイン、マンガなどにも用いられます。

ペン画の特徴は、さまざまな種類のペンを使い分けることができることです。西洋美術においては、ペンは非常に重要な素描の道具。たとえば、ゴッホが好んだのは、植物のアシを使った「葦ペン(あしペン)」でした。葦ペンは太い線が描けて、力強さを表現できるペンです。パワーあふれるゴッホの素描にぴったりで、同様にバロック時代の大画家・レンブラントも葦ペンを好んで使いました
ルネサンスから19世紀までの多くの画家が使用したのが「羽根ペン」です。羽ペンはガチョウの羽軸を使ったペンで、繊細な描写が可能でした。

現在ではボールペンやミリペン、筆ペンなど多様なペンを使ったペン画が生み出されており、繊細さと力強さの両方を感じさせる作品が制作されています。

ドローイング/デッサン/素描

「ドローイング」は、主にペンや鉛筆、木炭、コンテなどをもちいる技法で、フランス語でデッサン、日本語では素描と訳されます。

多くの場合、単色もしくはわずかな色数で描かれた線画をさします。ドローイングは多様なジャンルでもちいられる技法で、絵画だけでなくデザインや建築の分野においても使われます。絵画作品としては線だけで描く絵=ライン・ドローイングをいいます。

ドローイングの特徴は、直截的な表現力です。美術史におけるドローイングは長いあいだ絵画作品の下絵として扱われてきましたが、次第に芸術的価値が認められ、ルネッサンス時代には複雑な表現もできるようになりました。
19世紀以降のドローイングは単体の作品として制作され、20世紀初頭にはロダンやセザンヌによる即興的なライン・ドローイングは、下絵ではない完成品の絵画として成立しました。

ちなみに、日本語においてはドローイングは「素描」の中に含まれます。ドローイング(英語・drawing)とデッサン(フランス語・dessin)は、ほぼ同じ意味で使われています。

切り絵

「切り絵」は、刃物を使って紙を下絵の図柄どおりに切り抜いていく技法です。一般的には、下絵を黒い紙に固定し、不要な部分を切り抜いて作り上げていきます。日本における切り絵の歴史は非常に長く、かつては神域を飾ったり神々に捧げたりするものだったと言われています。現在でも、宮崎県の「高千穂神楽」では、白い紙を切った切り絵が飾られます。

切り絵の特徴は、世界中で見られる技法だということです。中国では1500年以上の歴史がある「中国剪紙」が世界無形文化遺産に登録されていますし、ヨーロッパでも農家の女性による切り絵が存在しました。女性たちの冬の娯楽として、長いあいだ親しまれていたものです。
日本における切り絵は戦後からしだいに見かけなくなり、現在ではそれほど認知度の高い絵画技法ではありません。しかし刃物の切り口によるたくまざる造形に独特の味わいがあり、アート作品として見直そうとする動きも高まっています。

ちぎり絵

「ちぎり絵」は、色のついた紙を使用する絵画技法です。多くは色のついた和紙などを手で小さくちぎり、厚手の紙などに貼り付けて絵画を制作します。紙のちぎれた部分の質感や繊維の毛羽立ち、貼り付けたときの盛り上がりなど、素材のテクスチャーなを生かした表現が可能になります。材質そのものの特色を生かす技法です。

ちぎり絵の特徴は、素材の風合いと意外な組み合わせを楽しめることでしょう。ほかの絵画技法のように白い紙に彩色していくわけではなく、あらかじめ色のついた素材の中から、手触りや質感をもとにして貼り付ける紙を選んでいきます。手を使ってちぎっていくために偶然性が発生し、同じ作家が同じ画題で製作したとしても全く印象がちがう作品になります。
ちぎり絵の大家としては山下清が有名ですが、山下清の作品群の中には花火など同じ画題を扱ったものが多数あり、ひとつひとつ独自の味わいを見せています。

コラージュ

「コラージュ」は、写真や新聞、雑誌などの切り抜きを使用する絵画技法です。「コラージュ(collage)
」とはフランス語で「ノリで貼る」という意味があり、切り抜いた素材を台紙に張って作品を制作します。
もともとは20世紀初頭の前衛美術運動「キュビズム」から生まれたもので、新聞紙・雑誌や包装紙、壁紙などの紙や木片、写真などをキャンバス上に直接貼り付けたり、ピンで留めたりする技法でした。ジョルジュ・ブラックやピカソも取り上げている技法です。

コラージュの特徴は、異質なもののぶつかり合い。キュビズムから始まり、ダダの写真家・マン・レイやシュルレアリスムのマックス・エルンストなどが、いろいろな物で立体的な作品を作り始めたころから、コラージュの概念は大きく変わりました。
絵画におけるコラージュは画面の構成手段であり、三次元には至りませんが、異質なイメージを持つものを一枚の台紙に貼り付けることで奥深く複雑な表現が可能な技法です。

モザイク

「モザイク」は、色ガラスや大理石をもちいて絵画表現をする技法です。小さく割った色ガラスや大理石を組み合わせ、しっくい壁や床に埋め込んで人物像やパターンを描きます。壁面粗食のモザイクは非常に古い絵画技法で、9世紀以降はとくに背景が金色のモザイクが、キリスト教などの聖堂内で美しく輝きました。威厳があり、神々しい空間を作り出すには、モザイクの技法が最適だったのです。

モザイクの特徴は、発色がよくて退色しにくいことです。色を構成するガラス片や大理石は、小さく砕いたままで使用するので色の変化が起きにくいのです。
いっぽうで、モザイクには細かい造形やなだらかな描線表現がむずかしいというデメリットがあります。躍動感を表現することは困難で、全体的に動きのない絵画になります。また制作には膨大な労力が必要で、素材や人件費の面からコストが高いのがネックでした。そのため、次第にフレスコ画にとってかわられた技法です。

フロッタージュ

フロッタージュは、コラージュと同様、マックス・エルンストが発案者といわれています。こすり出し技法と訳され、1925年からシュルレアリスムの台頭にしたがって多く用いられました。
コインや石などの上に紙を置き、その上から鉛筆などでこすり、コインや石の柄を紙に写すのがフロッタージュの方法です。
対象に墨などをつけて姿を写す拓本と技術的には近いものの、フロッタージュは拓本に比べると曖昧な部分があります。時に制作者の意図しない表現が出来上がること、見る人によって見えるものが違ってくることといった不確定要素が魅力です。

デカルコマニー

転写法を意味するデカルコマニーも、シュルレアリスムによって広く知られるようになりました。アイデアを技法としてかたちにしたのは、ピカソやキリコの贋作を描いたことでも知られるオスカー・ドミンゲスです。
ガラスや絵具が定着しにくい紙に絵具を塗布し、乾かないうちに別のガラスや紙を押し当て、模様を転写するのがデカルコマニーの技法です。
子どもの工作に応用する場合は、二つ折りにした紙の半分に絵具を置き、折って重ね合わせるのが簡単でしょう。ロールシャッハ・テストに用いられるような左右対称のデカルコマニーの絵ができます。

スクラッチ

ひっかくことやひっかき傷を意味する「スクラッチ」は、その名の通り、尖ったもので引っかくことで絵を描く技法です。
まず水彩絵具やマーカーで色を塗った上から、クレヨンなど比較的やわらかい画材で塗りつぶし、2色の層を作ります。出来上がった紙を、ようじや針金を引っかくとクレヨン部分の色のみが削られ、あらかじめ塗っておいた絵具やマーカーの色(地の色)があらわれるという仕組みです。
現在では、幼児用の知育玩具や、大人のためのリラクゼーションアイテムとして、引っかくだけで絵が描ける状態のノートが販売されています。

ドリッピング

ドリッピングは、絵具をしたたらせることで模様を描き出す手法です。
米国の抽象画家、ジャクソン・ポロックが好んで用いた絵画技法としても知られており、筆ではなく体を動かして描くため、「アクション・ペインティング」のひとつとして分類されることもあります。
ポロックはキャンバスを床に置いて、絵具をたらしていく手法をとりましたが、日本の学校教育では、もっぱらたらした絵具をストローなどで吹いて模様を作る「吹き流し」がおこなわれています。

絵画の種類

人気の高い風景画や肖像画など代表的な絵画の種類

風景画

 
「風景画」は、目に見える風景を画題とした絵画です。
西洋美術において風景画が絵画として成立したのは、14世紀のルネサンス期以降のことです。それまでは人物を中心とした構図だったため、風景は単なる背景でした。17世紀初頭にオランダなどで室内装飾の絵画として風景画が人気になるまで、専門の風景画家はいなかったのです。さらに19世紀になるまで風景画は屋内でを描かれていたとも言われ、印象派が登場するまでは、屋外での絵画制作は一般的ではありませんでした。

いっぽうで、中国では3世紀ごろの六朝時代から、自然を題材とした「山水画」が描かれており、風景画の歴史は古くから始まっていました。中国や日本ではもともと自然をうやまう傾向があり、絵画のテーマとしてもごく自然に風景が取り上げられていたのでした。
風景画の特徴は、画面構成の堅牢さです。風景画は広大な画題を描くため、しっかりとした画面構築ができていなければ絵画として成立しません。そのため、風景画の画家には相応の技量が必要になるのです。

画家自身の眼で見た風景をそのまま描くのは、イギリスの美術史家・ケネス・クラークが言う「あるがままの自然風景画」ですが、現在の風景画にはそれ以外に、平穏で明るい雰囲気をもった「理想の風景画」や現実的でない不思議な風景を描いた「幻想の風景画」などが多く見受けられます。

静物画

「静物画」は、自然物や切り花や果物などの人工物を画題とした絵画です。身近なものを画題としており、動きのないものを机の上などに配置して描きます。静物画は15世紀になるまで大きな発展はなく、宗教壁画やキリスト教の写本などから次第に広がり始めました。17~18世紀になると、しだいに現在のような静物画の形式が整っていきます。

静物画の特徴は、画題によって雰囲気が大きく変わることです。静物画の画題には花・食事風景・台所・壺などがよく見られますが、このほかにヴァニタス我あります。ヴァニタスとは「空虚」を意味するラテン語で、画題として頭蓋骨や腐りかけの果物、ぼろぼろの本などを取り上げます。ヴァニタスは全体的に人生のむなしさなどをイメージさせる画題です。

鮮やかで美しい花の静物画から、生命力あふれる食卓の静物画、キッチンにある魚や肉、野菜、食器と言った生活感のあるテーマなど、一口に静物画といっても、画題や色彩、タッチによって非常の多様な表現が可能になります。
ちなみに、静物画の場合は料理が並ぶ食卓を描いても、人物は描かれません。あくまでも物だけで画面が構成されている絵画です。

肖像画

「肖像画」は、特定の人物を描いた絵画です。西洋絵画においては、歴史画についで重要視されてきたジャンルで、これは、人間は自然界の動植物よりも高位に位置する存在だという西洋の考えに基づいています。同様に、人物の姿を中央に据えた肖像画は、風景画や静物画よりも重要なものであるとされていたのです。

肖像画の特徴は、描かれている人物が見たままの姿であるケースと、異なるケースがあることです。庶民がモデルの場合はそのままの姿を描くことが多く、王侯貴族や高い地位の聖職者がモデルなら、本来の姿よりも大きく崇高に描くことがありました。

これは高位にある人物の「あるべき姿」を描いたもので、容姿をつうじて内面を鋭く見抜いた作品も多く存在します。
また肖像画の中には、画家自身がポーズをとっている「自画像」もあります。自画像は肖像画のポーズや表情の研究をする目的や自意識の投影、探求を目的としています。画家が自分自身の内面に踏み入っている点が大きな特徴です。

博物画(植物画・動物画)

「博物画」は、動植物を描いた絵画です。生きて動いているものを対象としていますので、死んでしまった動物やすでに切り取られた花は静物画に入ります。

動物画の歴史は旧石器時代の洞窟壁画までさかのぼることができ、人間と動物との深い関係が感じられます。その後のキリスト教美術においては、精霊やキリストのシンボルとしてハトや仔羊が描かれることもありました。17~18世紀ごろになると、オランダやフランスで動物画を専門とする画家も登場し、18世紀のイギリスでは動物画は人気の絵画でした。
植物画は、植物の特徴を科学的に観察して描く絵画です。19世紀にはフランスやイギリスの植物学者と画家が新世界へ珍しい植物を求めて旅行をして、本国へ精密な植物画を送るなど隆盛をほこりました。

いっぽうで、日本の植物画は日本画の伝統から、平面的に描かれてきました。明治時代に西洋の植物画の影響を受けて、立体的な植物画が描かれるようになりました。
博物画の特徴は、動物でも植物でも丁寧に観察をして精緻な写生をしていることです。動植物の固有の形や触感までも再現できる博物画は、生命の特徴を表すものとして、今も高く評価されています。

宗教画

「宗教画」は、宗教の目的のために描かれた絵画です。キリスト教の宗教画やギリシャ神話の場面を描いたものが有名ですが、仏教やヒンドゥー教などにも宗教画があります。

どのような宗教の宗教画も、大きな目的は人々に宗教の内容を理解させることでした。文字の読み書きができない人に、宗教上の重要な考えを伝えるために描かれるのが宗教画なのです。
そのため長いあいだ、宗教画においては誰が描いた絵画かという点は重要視されませんでした。何を描いているのかという点が大切であり、さらに完成した絵画は神への献上物であるという認識がされました。

ルネサンス期になって宗教画にリアルさや躍動感、生命感が付与されるようになり、写実的な主教画が主流になってきました。
宗教画の特徴は、基本的に注文絵画だということです。王侯貴族や富裕層からの注文があって描かれる絵画であり、画家の意思や考えは反映されにくいものでした。
しかしルネサンス以降の西洋美術は、次第に宗教画にもリアルさを求めていきます。画家が人々から求められる形の宗教画を描くうちに、聖人や聖母はより人間的になり、写実性や現実味を帯びていったのです。

歴史画

「歴史画」は、歴史上の事件や出来事、伝説上のことを描いた絵画です。古代には戦闘場面を描いた歴史画が多く、王がみずからの戦勝を祝うための絵画でもありました。
17~19世紀にかけての西洋絵画において、歴史画は宗教画とともにもっとも重要な絵画だと位置づけられていました。当時すでに絵画としてジャンルが確立していた肖像画や静物画、風景画などよりも上位にある「偉大な部門(グラン・ジャンル)」でした。

ルネサンス期以降は、画家が想像力や発想を刺激する画題を探して、壮大なスケールの歴史画をえがくようになります。
「歴史画」の特徴は、画家に高度な技術が必要とされることです。歴史・宗教の知識がなければ、見たこともない神話の世界を描き出すことは難しいですし、登場人物にリアルさを持たせることはできません。そのため多大な知識とともに緊密な画面構成力や、画力が必要になり、技量のある画家しか描くことができない絵画です。

風俗画

「風俗画」は、庶民の日常生活を描いた絵画です。
絵画として成立したのは17世紀以降になりますが、日常生活を描いた絵画は、古代エジプトのピラミッド内や古代ローマの豪邸の壁画などに残っていますから、歴史の古い絵画ジャンルです。

17世紀になるとオランダで風俗画が多数描かれるようになります。これには歴史的な背景があり、当時プロテスタントの国だったオランダでは、カトリックと違って宗教画の需要が極端に少なかったために、かわりに「風俗画」が発達したと考えられます。絵画を発注する富裕層からは、宗教画の代わりに心なごむ日常を描いた風俗画が望まれたのです。

「風俗画」の特徴は、教訓や寓意、風刺などを画面上に含んでいることです。当時の人々の日常生活をそのまま切り取ったような絵画ですが、画面のあちこちに別の意味を持つモチーフが配置されていることがあります。
「風俗画」はかつての文化や生活習慣、社会の成り立ちなどを伝えてくれる絵画であると同時に、現代に共通する人生の教訓や風刺を含んだ作品でもあります。

絵画の代表的な種類と技法まとめ

芸術は、「誰も見たことのないものを表現する」、「誰も想像すらしていないものを創る」という繰り返しによって進化してきました。一方で、温故知新という言葉があるように、古い技術や伝統も、現代に活躍する画家たちによって受け継がれ、未来へ引き継がれていきます。技法を知ることは絵画を知ること。描く手法やテクニックを知ることで、見知った絵画が新鮮に見えてくるのではないでしょうか。

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