掛け軸の売却に税金はかかる?

掛け軸の売却前に5分だけチェック!余分な税金を払わない方法

掛け軸の売却によって生じる可能性のある税金についてご存知ですか?

「売る前に知っておけば損しなかった」
「知識があればもっと計画的に買取してもらえたのに」

そんな後悔をしないための方法、お教えします。

掛け軸など骨董品の売却益にも税金が必要か?

物品の購入や売却にはさまざまな税金がかかります。
ここで、基本的な売却益の税金について見てみましょう。

古美術品であっても、売却益は課税対象となりうる

まず原則として、掛け軸に限らず骨董品(古美術品)の売却益は課税対象です。
資産の売却について、骨董品以外の例をチェックしてみましょう。

  • 住宅の売却益:所得税と住民税の対象
  • 車の売却益:新車の購入額との差額が50万円の場合対象となる

これらは、分離課税といって給与所得などとは計算を分ける必要があります。
つまり、普段確定申告をおこなっていない人でも、納税のために確定申告をしなければならないということです。

掛け軸の場合、考え方は車の売却益と似ています。ある一定の金額以上の利益を得ると、課税対象として税金を支払わなければなりません。

掛け軸1点につき30万円以上なら、所得税がかかる

掛け軸などの骨董品は、1点につき30万円以上の売却益が出ると、課税対象になります。
30万円以下の掛け軸なら何点同時に売却しても、非課税となります。
具体的に例を挙げてみましょう。

  • 掛け軸1点を32万円で売却:課税
  • 掛け軸3点を10万円/10万円/10万円で売却:非課税

1点の査定額が30万円を超えなければ、課税対象にはなりません。
掛け軸をはじめとする骨董品および美術品は、

  • 30万円以下‥‥生活用有動産(日常の暮らしの必需品)
  • 30万円以上‥‥美術品

という線引きが定められています。
そのため、このように課税対象になる骨董品とならない骨董品に分かれるのです。

確定申告が必要と予想される掛け軸の売却を検討している場合、不安なことがあれば鑑定士や税理士に相談してもよいでしょう。

掛け軸の生前贈与は、税金がかからないようにしよう

掛け軸の売却に関連して、生前贈与についても知っていて損はありません。

「貴重な掛け軸を今のうちに譲りたい」
「孫のためにと以前購入した掛け軸を20歳の記念に贈る」

そんな場合は、税金を支払わずに授受できるように工夫しましょう。

年間110万円以下の枠で贈与してもらう(贈与税がかからない上限)

贈与税は、年間110万円以下の場合は申告不要、非課税です。

これは贈与を受ける人ごとに決められた金額であり、贈与者一人につき110万円が上限というわけではありません。
たとえば、3人に上限額いっぱいまでそれぞれ贈与したいと思っている場合は、

  • 子どもA‥‥110万円
  • 子どもB‥‥110万円
  • 子どもC‥‥110万円

のように、めいめいに110万円まで、計330万円を贈与できることになります。
掛け軸のような骨董品および美術品も同様に、110万円までの範囲で譲り受ければ申告不要、非課税となります。

査定額30万円以下の掛け軸を贈与してもらう(売却後の所得税がかからない)

なお、贈与する際には査定額30万円以下の掛け軸を贈与すると、所得税を支払う必要もありません。
贈与のケースについて具体例を挙げます。

1. 確定申告が必要になるケース

掛軸 査定額が50万円と100万円の掛軸2幅(150万円)
状況 1年間で2幅を贈与後、売却した
支払うべき税金 贈与税+売却益に応じた所得税

2. 確定申告が不要になるケース

掛軸 査定額20万円の掛軸3幅(60万円)
状況 1年間で3幅を贈与後、売却した
支払うべき税金 計60万円なので贈与税は不要
         掛け軸は生活用有動産とみなされ売却も非課税

このように、金額を計算しながら贈与をおこなうことで、費用をかけずに掛け軸を譲ったり売却したりすることができます。

なお、これはあくまで一例です。状況によっては同じようなケースであっても計算式に当てはまらないこともたくさんあります。
気になることは鑑定士、税理士に相談して申告漏れがないようにしましょう。

相続した掛け軸は、売却前なら税金がかからない?

所得税、贈与税のほかに、掛け軸売却に関連する税金として相続税があります。
掛け軸を相続した場合、売らずに手元においておけば税金はかからないのでしょうか?答えはNOです。

相続した掛け軸でも、財産的価値があれば課税対象となる

たとえ自分が購入したものではなく、相続した掛け軸であっても、「財産的価値がある=課税対象」です。
つまり、新たな持ち主として相続するだけで税金を支払う必要があるということです。

「財産的な価値ってどれくらい?いくらで買ったかなんて知らないよ」
「骨董は趣味だといっていたし、高いものがあるとは思えないけど」

このような油断は要注意。掛け軸を相続したら、まずその価値についてきちんと知っておく必要があると心にとめておいてください。

高額らしい掛け軸は、鑑定で価値を明確にしておく

とはいっても、残念ながらすべての掛け軸に価値があるというわけではありません。

  • 贋作である
  • 損傷が激しい
  • 現代の作品である

のようなさまざまな理由により、あまり価値のつかない掛け軸もあります。
しかし、

  • 共箱がついて立派な状態で保管されている
  • 著名な作家の作品である
  • 購入した場所や由来をきいている

といった掛け軸は、相続した段階で鑑定を依頼しておくと安心でしょう。鑑定は、掛け軸の知識がある鑑定士がおこないます。必要であれば鑑定書を発行し、その存在を証明するものとして保管しておくことができます。鑑定書の発行に関しては、業者や買取店の方針によって

  • 鑑定料に含まれている場合
  • 鑑定料と鑑定書発行料を別にしている場合

があります。鑑定を依頼する際に、料金形態がどのように設定されているか確かめておくとよいでしょう。