掛け軸の種類について

掛軸とは?掛け軸の種類や評価のポイントを解説

床の間を飾る掛軸を目にした方は多いのではないでしょうか。
和室を飾る掛け軸は、私たち日本人にとってもっとも身近な絵画であり、骨董品の代名詞でもあります。

それだけに意外と多くの方が持っていて、探すと押し入れや倉庫から出てきます。
もし掛け軸を飾る場所がなく、しまいっぱなしになるぐらいなら、買取に出してみませんか?
もしかしたら、びっくりするような高値で売れるかもしれません。
こちらの記事では、掛軸の主な種類について解説いたします。

掛け軸の種類

掛け軸の種類


掛け軸はその特徴から大きく3種類に分けられます。
「書」「絵」、そして「書と絵を合わせた作品」です。

書はその名の通り字を書き表したもので、単語のみである場合や、漢詩、和歌、俳句など、詩文を記したりするなど、さまざまな作品があります。作者も書家だけでなく、武将や貴族、僧のほか、近現代では政財界人や詩人など多彩です。

絵は水墨画、日本絵画、肉筆浮世絵、明治以降の日本画などが該当します。
書と絵を合わせたものは水墨画の世界でいう「詩画軸」のように、縦に長い掛け軸の上部分に書を、下部分に絵を描いたものです。書は絵に合わせた漢詩や和歌、俳句などが用いられることが多く、書と絵で1つのテーマを表現します。

また、起源である中国やその文化の影響を受けた韓国で制作された掛け軸もあります。それぞれの国の文化を表現した素晴らしい作品は、非常に高値で取引されています。

日本画

掛軸はもともと中国から伝わった美術品ですが、美人画や花鳥画など日本独自の進化を遂げた作品も多く存在します。床の間に飾ることで室内が明るくなるような作品が多く好まれました。

掛軸における日本画は、江戸時代の肉筆浮世絵で一気にその価値を高めたとされています。明治・大正期には、掛軸と日本画は互いに価値を高めあい、多くの作家が日本画の掛軸をあらわしました。

それらの作品は時代を超えて、今は骨董品としてその高い芸術的価値を認められています。

中国掛軸

中国の作家によって描かれ、表装された掛軸は「中国掛軸」と呼ばれることもあります。

掛軸というと日本風の作品を連想しがちですが、高度経済成長によりバブルを迎えた中国はアート業界も急成長。投資目的でさまざまな作家の掛軸を購入する富裕層も多く、中国掛軸は国内外で注目の骨董品、アート作品となっています。

買取福助では、国内外で高値を呼ぶ可能性の高い中国掛軸の買取を強化中。作家名や来歴の分からないものも、お気軽にお問い合わせください。

仏画

掛軸は、もともと仏教を広めるための効果的なアイテムとして日本に伝えられたものです。

とはいえひとくちに仏画といっても、構図や種類はさまざま。曼荼羅、来迎図、六道絵から、高僧を描いた肖像画など、仏教に関連する絵画であれば基本的にすべて「仏画」といえます。

仏教徒でなくとも、荒々しい毘沙門天や穏やかな表情の仏に畏敬の念を感じる日本人は多いもの。仏画掛軸が骨董品として人気なのも、日本人の根底にある仏さまを拝みたくなる気持ちゆえかもしれません。

水墨画

墨一色で、独自の世界を構築する水墨画。禅の思想とともに中国から伝わり、次第に描かれるようになった山水画も人気が高まりました。

墨の濃淡であらわされた山の岩肌や水の流れは、モノクロのシャープさと鮮やかな自然の美しさを同時に感じることができる芸術といえるでしょう。

これらの水墨画は墨絵とも称し、「にじみ」や「ぼかし」といった技法による繊細かつ大胆な表現が特徴です。

伝統的な日本家屋だけでなく現代のインテリアとしてもぴったりな水墨画の掛軸は、有名作家の作品をはじめとして、多くの作品が高値で取引されています。

花鳥画

花鳥画は、中国から伝わり日本で独自の進化を遂げたジャンルの一つ。花や鳥だけでなく、草木や虫、水生生物なども描かれます。

細い輪郭線による精緻な描写がなされた作品が多く、その描きこまれた世界観は、見る者を圧倒します。

まっすぐ伸びる竹は成長、仙人の乗り物とされる鶴は長寿や吉祥など、描かれるモチーフが象徴性を帯びているのも特徴です。

お祝いや出世を願うために贈る華やかな作品も多く、掛軸の中でも特に人気の高い美術品といえます。

美人画

日本における美人画は、江戸時代に一つのピークを迎えましたが、その後も人気は衰えることなく、大正・昭和期にも多くの作家が輩出されました。

美人の定義にはまる表面的な美だけではなく、浮世絵に代表される様式美的な描写、内面や仕草の美しさ、情念をたたえた凄みのある美など、あらゆる「女性の美」にフォーカスを当てた表現は、たいへん魅力的です。

飾っていると部屋が明るくなるような雰囲気があるため、美人画の掛軸は人気が高いのです。

その他

  • 肉筆浮世絵
  • 消息(手紙)
  • 短冊(和歌などがしたためられているもの)
  • 色紙
  • 墨跡(禅僧がしたためたもの)
  • 古筆(平安〜鎌倉時代の「かな書」)
  • 断簡(巻物を一部切り取ったもの)
  • 対幅(連作/2〜12のセットになっていることが多い)

このほか、地方によっては子どもが生まれた時に祝いとして贈る特別な掛け軸があったり、初節句のために掛軸を用意したりすることもあります。
ひとくちに掛軸といってもその歴史は古く、また掛軸をあらわしている人もさまざまです。

掛軸の作家分類

  • 浮世絵師
  • 仏僧
  • 禅僧
  • 絵師
  • 書家
  • 歴史上の偉人(手紙が後年表装される)
  • 俳人

掛軸の世界は奥深く、広大です。そのため、知識のない買取業者に売却してしまうと、本来は値打ちがある作品なのにそうとは知らずに安く査定されてしまったり、買取価格がつかなかったりします。
そんなことにならないよう、掛軸の買取は、骨董品の知識豊富な掛軸を専門とする買取業者に依頼しましょう。

知っておくと損をしない、人気の掛軸・4種類

知っておくと損をしない、人気の掛軸・4種類

それでは、掛軸の多様なジャンルの中から、骨董品市場で人気の4種類をご紹介しましょう。

  1. 画題が多くて人気の「日常掛け」
  2. 季節ごとの作品で人気の「季節掛け」
  3. 底堅い需要がある「慶事掛け」「仏事掛け」
  4. 茶道で使うため安定的な人気の「茶掛け」

「人気の高い掛軸」=飾りやすい作品であるため、どんなコレクションでも柱となるものですし、買取時の査定額も高価です。
掛軸を購入・整理するのなら、この4種類から始めてみてはいかがでしょう。

画題が多くて人気の「日常掛け」

季節にかかわらず、いつでもかけられる掛軸が「日常掛け」です。

時期や節句・慶事・仏事に関係なく、好きな時に飾れるのでとても使いやすいため需要が高く、骨董品市場では、人気の高い掛軸。
ここでは日常掛けのなかでもとくに人気のある「山水画」と「富士山」の掛軸の魅力をご紹介しましょう。
どちらもお部屋にあるだけで清々しくなるお軸です。

山水画

山水画(さんすいが)」は、深い山や川、断崖など自然の景色をモチーフとした絵画作品です。
見ているだけで心が澄んでくるような山水画の掛軸は、床の間にあるだけで、心の内がしんとなってくるような哲学的な深さを感じさせます。

なぜなら、山水画に描かれる自然にはそれぞれ東洋哲学的な意味があり、複数のモチーフが共鳴しあって独特の静かな画面を作り上げているからです。

たとえば深い山は俗世間から離れて静かに暮らすことを意味し、小さな建物は画家が思い描く理想のお家。川の上で船を操っている漁民は、自然と溶け合って暮らす人生を表しています。

つまり山水画の風景は画家が思い描いている一種の「理想郷」であり、東洋画における天国のようなものなのです。
掛け軸の人気ランキングで常に上位にある山水画は、「東洋画」としてひとまとめにされることもありますが、日本の山水画と中国美術の山水画では伝わってくるイメージが少し異なります。

中国の山水画が硬質な古美術品だとすると、日本の山水画はやや柔らかい雰囲気の絵画です。
どちらも和風のお家にあうインテリアになりますので、好みで選ぶといいでしょう。

富士山

富士山は、日本の霊峰。
昔から日本では信仰の対象ともなっており、掛け軸としては売れ筋ナンバーワンといってもいいほど人気のモチーフです。
最近では富士山が世界遺産に登録されたこともあり、海外の掛軸収集家からも人気があります。

特に朝日を浴びて神々しく輝く「赤富士(あかふじ)」は、招福・長寿をあらわすため、開運画としてもひっぱりだこです。
なだらかな山すそは「末広がり」という意味もあって縁起が良く、一年中季節を問わず床の間に飾って鑑賞できます。

「富士山」「赤富士」の掛軸は文化財級の有名作家も多数描いており、肉筆画はコレクターなどによって非常な高値で売買されています。あまりにも需要が高いので高品質の印刷作品も作られており、こちらも安定的に人気が高い掛軸です。

富士山の掛軸はオークションなどでもよく見かけますが、肉筆画の中には鑑定書付きの「お宝」もあれば、落款付きでも真贋があやしいものもあります。

購入・売却の際には専門家の鑑定・査定を受けたうえで適切な価格を提示してもらうようにしましょう。

季節ごとの作品で人気の「季節掛け」

「季節掛け」は、日本の季節を代表する花鳥風月を描いた掛軸です。

日本には明確な四季があり、掛け軸ではそれぞれの季節にふさわしい作品を床の間に掛けて、自然の美しさを鑑賞します。
日本人の自然に対する崇拝の気持ちが「季節掛け」の掛軸人気を支えているのです。

ここでは四季ごとによく描かれるモチーフをご紹介しましょう。日本人の繊細な美意識を象徴するものがとても多いです。

春・夏をあらわすモチーフ

春の代表的なモチーフは「桜」です。華やかに咲き誇り、散りぎわも潔くみごとな桜は、日本人の基本的な精神性を表現する特別な植物だと言えます。

掛軸における桜はつぼみの時期から始まって、三分咲き、五分咲き、満開、散りぎわまであらゆる場面が描かれ、季節感たっぷり。
早朝のすがすがしい花や妖艶な夜桜まで大勢の作家が描いているモチーフです。

桜の掛軸は、あまりにもイメージが強すぎるだけに、室内装飾品としては鑑賞期間が短いのがネックですが、季節の移ろいをより深く感じさせます。

夏のモチーフと言えば、水辺の生きもの。鮎やカワセミと水辺の風景は、コレクター好みの掛軸です。
とくに「翡翠」とも書くカワセミは彩り豊かな美しい鳥で、有名作家の描いた名品が多数残されています。

作品の色を生かして、掛軸の表装をブルーやグリーン系に統一すると夏の涼しげな和風インテリアとして使えますので、モダンな掛軸を探している人にもおすすめです。

秋・冬をあらわすモチーフ

しっとりした風情を感じさせる秋は、「もののあわれ」を表す掛軸が多いのが特徴です。

とくに紅葉は、日本画のクールな画面に赤や黄色を取り入れることができ、色彩豊かな秋の掛軸には欠かせません。
紅葉単体で描かれることもありますが、小鳥を添えたり、たくさんの紅葉で染まった山の風景を描いたりすることで、おもむきの異なる作品になります。

紅葉の掛軸は、鮮やかな色が魅力です。購入する場合はできれば印刷ものでなく、作家が肉筆で描いた作品を選びましょう。肉筆画は買取時の鑑定・査定額も高額になりますので、おすすめです。

冬は画題の少ない季節だと言われますが、赤い南天(なんてん)と雪景色を合わせた掛軸は不動の人気作。
南天は「難を転じる」ということから縁起のいいモチーフで、真っ白な雪に赤い南天の実をとりあわせることで、冬の床の間が、すがすがしい空間になります。

年中使える「四季花」

四季の植物を描いた掛軸の中でも、季節に関係なく掛けられるものがあります。「四季花」の掛軸です。
「四季花」とは、季節の代表的な花々を一幅の掛軸の中に描き込んだもの

花の王様と呼ばれる「牡丹(ぼたん)」の花を中心として、梅・桜・しょうぶ・桔梗・菊・南天・雪割草・水仙などを描き、一年じゅういつでもかけられる「日常掛け」に仕立てたお軸のことです。

四季の花が一度に咲くなど現実にはあり得ない光景ですが、床の間を華やかにしてくれる掛軸の一つ。
また季節にふさわしい作品がお手元にない時にはいつでも飾れる利点もあります。
掛軸収集家なら、一本は持っておきたいお軸です。

底堅い需要がある「慶事掛け」「仏事掛け」

人生の節目節目を、床の間で飾るのが掛軸の重要な役割です。

「慶事掛け」は結婚式や結納、結婚記念日などのお祝い事で使う掛軸で、「仏事掛け」・「仏掛け」は法要のときに使う掛軸です。どちらも日本人の生活にとっては、なくてはならない室内装飾品。

人気があるのはもちろん、確実な需要がある売れ筋アイテムのため、出張買取での鑑定・査定額はかなり高価な掛け軸です。
ここでは慶事掛けの「松竹梅」「鶴亀」と仏事掛けの「名号」をご紹介します。どちらも日常掛けにも使えるモチーフです。

「慶事掛け」には「松竹梅」「鶴亀」

「松竹梅」はおめでたい図柄の代表選手。あらゆる慶事で使えますが、とくに結納や結婚式などには欠かせない縁起の良い掛軸です。

結婚のお祝いの場合は、結納の日取りが決まってからすぐに掛けることができ、そのまま結婚式の終了まで飾っておきます。
お祝いの期間ずっと飾っておけるのが慶事掛けなのです。

「松竹梅」とともにおめでたい掛け軸が、夫婦仲の良さ・良縁をあらわす「鶴亀」の掛軸。
長寿と幸運の鳥である鶴は、日本のみならず欧米でも吉祥のシンボルですし、カメは招福吉祥の動物と言われます。ただし「鶴亀」の掛軸の場合は、鶴もしくはカメを単体で描いたものは慶事掛けとして使えません。

どちらも縁起の良い生き物ですが、「鶴亀」がそろっていない作品は「日常掛け」の掛軸に分類されます。
同じモチーフですが、取り合わせによっては慶事掛けに使えないものがあると覚えておきましょう。

「仏事掛け」には「名号」の掛軸

「名号(みょうごう)」とは、お釈迦さまや菩薩の称号のことです。仏教の法要などのときには、名号の文字を描いた掛軸を床の間に飾ります。

「名号」は同じ仏教でも宗派ごとに言葉が違い、たとえば浄土宗・浄土真宗ではとくに「六字名号(ろくじみょうごう)」といって「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」の六字を一行にした「書」の掛軸です。

浄土宗・浄土真宗では、この六字の名号を尊び、唱えることで浄土に生まれるという教えがあり、とても貴重な掛軸です。
名号の掛軸は文字だけの非常にシンプルなものですが、書いた人ごとに味があり、古い作品の中には希少価値のあるお軸も珍しくありません。また、外国人観光客からの人気も高い掛軸です。

「茶掛け」は安定的に人気の掛軸

茶道の茶室内で床の間を飾るものが「茶掛け」です。

茶掛けに使う掛軸は、むかしから文字だけの「書」とされ、茶席に招かれた客は、亭主の用意した掛け軸を鑑賞してその日の茶席の意味や季節を読み取ります。
ここでは茶掛けの代表的な「墨蹟」「古筆」をご紹介しましょう。文字だけの掛軸ですが、知れば知るほど味わいのある作品です。

墨蹟

「墨蹟(ぼくせき)」とは、おもに仏教の禅宗の高僧が書いた筆跡のことです。
禅の教えでは師の筆跡を通じて学ぶというスタイルがあり、高僧が弟子に与えた印可状(いんかじょう)などが残されています。

また墨蹟には、初めから掛軸にするために高僧にお願いして書いてもらったものがあります。
徳の高い僧侶が、「知足」など禅宗の用語である「禅語」をしるした墨蹟の掛軸も多数あります。

墨蹟の味わいは、個性的な筆跡
収集すればするほど興味がわき、茶席で使うほか、古美術品のコレクターが収集しているケースも多く、掛軸の中でも安定的に人気の高いジャンルです。

また最近では、茶掛けを客間の室内装飾に使うこともあります。和風インテリアの一つとして、表装の「裂(きれ)」や和紙に凝ったモダンなものも増えてきました。

古筆

「古筆(こひつ)」とは、平安時代から鎌倉時代ごろの能書家の筆跡を指します。書かれているのは和歌集からとった和歌などで、古くから貴族の手によって巻物や冊子で大切に保存されてきました。

茶道においては、茶人・村野紹鷗(むらのじょうおう)が茶室に佳人・藤原定家の「小倉草子」を茶室内に掛けたことをきっかけとして、茶道に取り入れられ、茶道が広まるなかで古筆人気も上昇。

しだいに古筆が足りなくなり、巻物や冊子を切断した「古筆切(こひつぎれ)」が作られるようになりました。
今もなお古筆掛軸の中で人気のあるのが、村野紹鷗が茶室にかけたという藤原定家の「小倉色紙」です。