戦時中に旧日本軍から叙勲された勲章には、たくさんの種類があることをご存知ですか?
この記事では、豊富に制定されている勲章の種類を知りながら、その価値の見極め方についても解説していきます。
目次
勲章とは?
勲章は、功績を挙げた人などに授けられる印のようなものです。
比較的身近なものでは、スポーツ大会で授与されるメダルも勲章の一つとして数えられます。
スポーツ大会ではスポーツに対する記録などを称えてメダルが授与されますが、勲章の場合は、それが文化に対してだったり、科学技術に対してであったり、公務を遂行してきた貢献に対してだったり、さまざまです。
日本の勲章の歴史
叙勲制度については日本は古くからあり、例えば、文武天皇の大宝律令がその一つです。
この大宝律令では、勲一等から勲十二等までの12段階の勲位が定められており、これが勲位の起源だと考えられています。
大宝律令は701年の大宝元年に制定されたもの。とても古い歴史があるのです。当時はメダルの代わりに、田畑などが与えられていたそうです。
今ある勲章の歴史は、明治以降に制定されるようになりました。勲章の種類や、対象は変化していますが、明治時代も現代も、与えられる勲章に大きな違いはありません。
勲章は国家から個人に与えられるもので、一般的には国や地域、文化等に貢献した人に与えられます。
勲章と記章
勲章は、勲等という位を与えられた人に与える印のようなものです。一方、記章とは、位に関係なく与えられるものです。
他にも勲章と類似するもので、従軍した印に与えられる従軍記章や、国家のイベントがあるごとに参列者へ配られた記念章など、記章と呼ばれるものもあります。この記章については、あとに詳しく解説していきます。
勲章の種類
勲章にはさまざまな種類があります。ここでは、今では運用されていない勲章も合わせてご紹介していきます。まずは、すでに廃止されている勲章からです。
桐花章(とうかしょう)
桐花大綬章は、明治21年に制定された旭日桐花大綬章のこと。
現在では用いられていない勲章です。桐の花がモチーフになっており、旭日の光から光線が出ているようなデザインになっています。
旭日章(きょくじつしょう)
旭日章は、国家や公共に対し大きな功績を挙げた人に与えられるものです。同じ旭日章でも等級があり、以下のように第1等〜6等まであります。
- 旭日大綬章 (きょくじつだいじゅしょう)
- 旭日重光章 (きょくじつじゅうこうしょう)
- 旭日中綬章 (きょくじつちゅうじゅしょう)
- 旭日小綬章 (きょくじつしょうじゅしょう)
- 旭日双光章 (きょくじつそうこうしょう)
- 旭日単光章 (きょくじつたんこうしょう)
瑞宝章(ずいほうしょう)
瑞宝章は、長年公務などに従事していた人に対して与えられます。
国家や公共に功労のある人という点では旭日章と同じです。こちらも旭日章のように第6等まであります。
- 瑞宝大綬章 (ずいほうだいじゅしょう)
- 瑞宝重光章 (ずいほうじゅうこうしょう)
- 瑞宝中綬章 (ずいほうちゅうじゅしょう)
- 瑞宝小綬章 (ずいほうしょう)じゅしょう)
- 瑞宝双光章 (ずいほうそうこうしょう)
- 瑞宝単光章 (ずいほうたんこうしょう)
宝冠章(ほうかんしょう)
宝冠章は、明治21年に制定された女性を対象とした勲章です。
当時は、旭日章が男性、宝冠章が女性と対象を分けていましたが、現代の日本では男女ともに旭日章の対象となっています。
現在運用されている宝冠章の対象は、皇室の女性、外国人のみ。儀礼叙勲などの特別な場面で授与されています。
菊花章(きっかしょう)
菊花章は、正式には大勲位菊花章といいます。旭日章や瑞宝章よりも優れた功労がある場合に与えられるものです。
大勲位菊花章頸飾は、日本の勲章の中でも最高位に値する勲章です。これに次ぐのが大勲位菊花大綬章になります。
金鵄勲章(きんしくんしょう)戦争の武功により日本軍から授与された武功勲章
金鵄勲章は、日本唯一の武功勲章として明治23年に制定された勲章ですが、日本国憲法が制定された昭和22年に廃止されています。
第一次・第二次世界大戦や満州事変といった大きな戦争や事変における戦績や功績をたたえて授与されるもので、7つの武級に分かれています。
「金鵄勲章(きんしくんしょう)」は、戦いで功績をあげた陸海軍の軍人や軍属に授与されたもの。
デザインは、日本神話における神武天皇の黄金色の鵄(トビ)をモチーフにしています。
この勲章が受章されていたのは、6つの戦争中においてでした。
- 日清戦争
- 日露戦争
- 第一次世界大戦
- 満州事変
- 日中戦争(支那事変)
- 太平洋戦争(大東亜戦争)
受章者は数千人から数十万人と多いですが、戦後の混乱などで紛失、破損したものも非常に多いことから、現在ではきれいな状態の勲章は価値があります。
金鵄勲章には、最高の功一級から、比較的多くの人が受章した功七級まで階級があり、それぞれサイズやデザインが異なります。
功一級を受章したのは、すべての戦争や事変を通してわすか42人。
つまり功一級金鵄勲章は、それだけしか存在しないことになります。
こうした階級によっても、勲章の買取価格は変わってきます。
この金鵄勲章を受章すると、功績をたたえて年金も支給されました。
つまり、勲章は「その場限りの名誉」ではなく、戦後の生活や残された家族を支えるためのものでもあったのです。
金鵄勲章は戦争がおこなわれていた時代の勲章であり、1947年に日本国憲法が施行された際に廃止されました。
金鵄勲章は7階級:上の位ほど希少価値は高い
金鵄勲章は、次に紹介する7つの功級があり、それぞれもらえる勲章のデザインや年金額が異なります。
- 功一級:天皇直隷部隊の司令官など
- 功二級:功労ある将官、最高位の佐官
- 功三級:将官の初叙/功労ある佐官・尉官の最高功級
- 功四級:佐官の初叙/功労ある尉官・准士官・下士官の最高功級
- 功五級:尉官の初叙/功労ある准士官・下士官/兵の最高高級
- 功六級:准士官・下士官の初叙/功労ある兵
- 功七級:兵の初叙
このように位によって与えられる勲章は異なっており、またどれだけ戦績を上げても階級によって最高の級が定められているため、飛び級のように授与されることはありませんでした。
したがって、金鵄勲章自体は戦争時にそれぞれ数千人〜数十万人規模が受章しましたが、上位の金鵄勲章ほど授与者は少なく、功一級の受章者は全戦争を通してたった42人しかいません。
文化勲章
文化勲章は、文化の発達に功績をおさめた者に与えられる勲章です。
文化とは、美術や音楽などの芸術に関するものと思いがちですが、スポーツや科学技術、教育などについても文化勲章が授与される対象となります。
勲章の買取価格を左右する?勲章の付属品勲記とは
買取金額を左右する付属品に、勲記(くんき)というものがあります。
これには、次のようなことが記されています。
- 受章者の氏名
- 受章する勲章名
- 受章の年月日
- 授与者の名称
- 国家が押す印章「国璽(こくじ)」
これらを記した勲記は、中古市場においては、いわば勲章の真贋を保証するギャランティカードのような役割も果たします。
戦時中の勲章や海外の勲章は勲記が見当たらない、ということもあるかもしれませんが、もしも付属品として残っている場合は
買取額が変わってくる可能性があります。
記章の種類
徽章は、メダル、ワッペン、リボン、バッジのことです。腕章や襟章、肩章と呼ばれることもあり、「記章」という字があてられることもあります。
社員バッジや校章も一種の記章ですが、買取において価値があるのはやはり希少性の高いものです。
日本軍の記章は、日本が関わる戦争や事変になんらかの形で関わったことを顕彰するものです。
従軍記章がこれにあたります。比較的数は多いものの、保存状態のよいものや現存数が少ないもの、コレクターに人気の記章は高く買取される可能性があります。
従軍記章
日本では、戦役に関わったことに対して与えられる従軍記章があります。
この従軍記章は従軍した人すべてに与えられるものです。
この従軍の定義とは、戦地で実際に戦ったことだけを示すわけではありません。
医療従事者や物資の輸送に関わった人など、広く従軍に関わって後方支援した人に対しても与えられます。
旧日本軍の記章「満州国製の従軍記章」
1939年に満州国とモンゴル人民共和国の間でおきた紛争である、ノモンハン事件の従軍記章は、国内製と満州国製の2種類があります。
国内製の記章はそれほど高額ではありませんが、満州国製の記章は数が少ないため高値で取引されます。
旧日本軍の航空隊将校用「操縦徽章」
記章の中でもっとも人気の高いアイテムのひとつが、1923年に制定された「操縦徽章」です。希少性があることにくわえ、サイズが大きめで見栄えが良いことから数万円で取引されています。
記念章
記念章は、明治時代に制定された大日本国帝国憲法の発布を記念した記章、天皇が式典に参加したことを記念する記章など、何かの記念として与えられた記章です。
現代に置き換えると、イベントなどで配られるノベルティグッズのようなイメージで、さまざまなシーンで参列者などに与えられました。
赤十字社が授与する「赤十字有功章」
赤十字有功章は、日本赤十字社に寄付や貢献をした人へ授与されるものです。
- 赤十字社金色有功章
- 赤十字社銀色有功章
- 満州赤十字社員章
これらの記章が買取されており、現在では数千円〜一万円前後で取引されるのが相場です。
詳しく勲章の種類を知りたい場合は専門家へ
勲章といえばなんとなくイメージがつくものですが、実際は勲章にも色んな種類があり、勲位が与えられるなど、複雑な仕組みになっています。授与される対象も、「功績を残した場合」など、少し抽象的な基準です。
また、勲章は時代によっても種類や価値が変わります。その真価は、一般の人ではなかなかわからないものです。
そっくりのレプリカが出回っていることも
実は勲章は、レプリカが多いことでも知られています。
日本では、ミリタリーショップなどで扱っていることが多く、ドイツ軍の勲章など、海外の勲章レプリカも人気が高いものになります。
もちろん、旧日本軍の勲章のレプリカも人気が高いようです。
勲章は判別が難しいので専門家の査定や鑑定がおすすめ
一般的に旭日章や文化勲章などの勲章は、国家から与えられるものです。
多くの人が手にできるものではないため、本物であれば希少価値は高いと言えるでしょう。
しかし、従軍記章などは、一般の人でも比較的手に入りやすいもの。遺品から出てくることも珍しくありません。
しかし、レプリカが多いことも鑑みて、基本的にはその真贋を見極めるのは、プロにお任せした方が安心です。
本物と偽物の見分けは簡単ではありませんので、勲章などを扱っている買取専門業者などに依頼して、その価値を明らかにしておくといいでしょう。
日本軍の勲章・記章まとめ
遺品から出てくる勲章は、最近の新しいものではないかもしれません。一般的に多くの人が授与されるわけではありませんし、種類も多いので、詳しいことはわからなくても当然。
ネットなどで自分で検索するのは限度がありますので、プロの鑑定士に見てもらい、どれくらいの価値があるものなのかハッキリさせておくといいですね。