版画の代表的な種類や技法を解説

版画の代表的な種類や技法を解説

版画について

「版画」ときくと、純粋な絵画作品の種類として考えていいのか、少し迷うかもしれません。しかし版画は人気の美術ジャンルのひとつであり、れっきとした絵画作品です。多様な技術を駆使する版画は作家の表現方法としてしっかり認知されているのです。
この記事では、版画の種類や代表的な技法について詳しく解説していきます。

版画は多種類の表現ができる美術品

版画は、木や板状の銅などにさまざまな技法をほどこして「版」を作り、インクの転写などで作品を作るものです。
版画の歴史は1400年代のルネサンス期にまでさかのぼりますが、「ファインアート」の美術品として認められたのは19世紀の後半にことです。ヨーロッパの伝統的な美術に行き詰まりを感じていた若手作家たちが、日本の浮世絵などの影響を受けて、版画の可能性に着目したことから、版画の世界が広がりました。

以来、版画作品は試行錯誤を重ねて、実験的な表現方法を模索していきます。こうやって生まれた新しい表現方法はモダンアートの世界で大きく開花し、版画は近現代アートに欠かせない、大きな存在感を持つジャンルに成長したのです。

版画は複製品・印刷物?

いっぽうで、今もなお版画=複製品・印刷物と考えられている面もあります。
たしかに版画はオリジナルの原版を使用して複数の作品を作りますので、「複製品」といえるかもしれません。

しかし作家にとっては、版画は表現方法のひとつです。ピカソやルオー、シャガールなどの芸術家たちも積極的に版画作品を発表しましたし、20世紀以降の美術の世界では、版画は絵画作品の一種として認められてきました。製作部数を限定し、ナンバリングをして作家の直筆サインをつけるなどのスタイルで、独自性を確立してきたのです。

そういった努力が実り、現在では版画もオリジナリティのある美術作品としてコレクターも存在し、市場が成立している独自のジャンルに成長しました。
安易に、版画=複製品・印刷物とは言えない、絵画作品なのです。

版画の種類

版画には、製作工程や原画の製作意図などにより、いくつかの種類が存在します。ここでは代表的な二つをご紹介しましょう。

オリジナル版画

版画には多数の種類があります。なかでも独自性が高いと言われるのが「オリジナル版画」です。
「オリジナル版画」とは、作家が版画にするために原画を描き、制作したもの。そのため版画以外には同一の絵画は存在せず、完全にオリジナルな作品です。
オリジナル版画の場合、作家が下絵を描き、版を作り、刷りなどすべての工程に立ち会い・監修をします。そして完成作品にはエディションナンバーをつけて、限定制作であることの証明とします。
つまり、作家自身が、まちがいなく自分の作品であるという保証を付けた版画です。

エスタンプ版画

「エスタンプ版画」とは、画家が描いた絵画作品をもとにして、第三者によって作成された版画のことです。もとになる絵画は最初から版画にする目的で描かれていない点が、オリジナル版画との大きな違い。また、画家本人が版画の製作過程を監修していることもほとんどありません。

とはいえ、原画を忠実に再現し、画家もしくは画家が亡くなっている場合は遺族の了承を得たうえで製作される版画ですから、決してコピー作品ではありません。
サインは原画にもともと書いてあったものを版画に刷る「版上サイン」にしたり、遺族サイン、版画の刷師サインにしたりと、さまざまです。

なお日本ではエスタンプ版画を「複製版画」と言っていますが、フランス語の「エスタンプ」は「版画」という意味で、複製・コピーという意味合いはありません。版画作品としては、どこまでもオリジナルの一枚です。

版画の代表的な技法4つを紹介

多様な技法を使って、あざやかな絵画世界を表現する版画。ここでは主な技法4つをより詳しくご紹介します。長い時間をかけて磨き上げられた版画の技法は、おどろくほど多種多様なのです。

凸版画

「凸版画(とつはんが)」は、インクを版の出っ張ったところ(凸部)に塗って、上から紙をのせて印刷する技法です。とくに「木版画」は版画の中でも最古の技法と言われ、中国では7世紀ごろから木版による印刷が行われていました。日本でも8世紀ごろに木版画による経文が作られています。

木版画

「木版画」は、木の板の上に原画を描き、残したい線や面以外の部分を彫刻刀で削り取って作ります。
木版画に使われる板には、木材を縦割りにした「板目木版(いためもくはん)」、横割りした「木口木版(こぐちもくはん)」があります。
「板目木版」では木目を生かした豪快な表現ができ、「木口木版」では木地のしまった木材の上で繊細な凹凸を彫りあげて、細かい描線を作ることができます。

コラグラフ

「コラグラフ」は、版にいろいろな素材を貼ったり塗ったりして作る版画です。木版画に同時にほどこすことが多い技法で、布などさまざまな異素材を貼りつけたり、アクリル絵の具の下地材であるジェッソなどを塗ったりしてマチエールを作ります。

凹版画(直刻法)

「凹版画(おうはんが)」は、版上のへこんだ部分(凹部)にインクを詰めて、表面の余計なインクを取り除いたあとに印刷する技法です。直接凹版技法(直刻法)と間接凹版技法(蝕刻法)という2つの方法があり、どちらも微妙な描線の表現ができます。ここではまず、直刻法について細かくご紹介しましょう。

エングレービング

「エングレービング」は、彫刻刀で直接、銅板に彫っていく技法です。ビュランという先端をV字に研いだ彫刻刀を使うため、線は硬質でシャープな印象です。作品に奥行きや陰影をつける場合は、線を並行に彫ったり交差させたりして、量感も表現します。
 

ドライポイント

「ドライポイント」は、ニードルという鉄筆で銅板に描いてゆく技法です。ニードルの角度や速度を変えることで微妙な描き分けができ、柔らかく表情のある線が生まれます。また、彫った後に描線周辺にできる銅板の削りカスなどは、あえてそのままにしておくため、描線ににじみができます。このにじみが画面上に陰影を作り、情緒ある作品になる技法です。
 

メゾチント

「メゾチント」は、最初に細かいささくれを版全体に付けてから、描線を削っていく技法です。版全体にほどこす手順が非常に柔らかい印象のバックを作りあげ、そこにスクレーパーやバニッシャーで線を削りだしていきます。削って磨いた部分の強弱によって、さまざまなトーンの明暗・濃淡を表現できますが、反面、大変な労力と時間、テクニックが必要な技法です。

凹版画(蝕刻法)

凹版画(おうはんが)の「蝕刻法」とは、金属が酸によって腐食する性質を利用して銅板に凹部を作る技法です。銅板に防蝕剤を塗ったあとで、ニードルなどで削って防蝕膜を取り除き、線を描きます。その後、塩化第二鉄や硝酸などの腐蝕液にひたして、線部分の金属を腐蝕させ、凹部を作り出す技法です。
 

エッチング

「エッチング」は、防蝕剤を塗ったあと、ニードルで防蝕剤(グランド)を削りとって線を描きます。腐蝕液につけておく時間や濃度などによって線の強弱が現れるため、ニュアンスのある描線が表現できます。銅板を直接削るのではなく、銅板の上の防蝕剤(グランド)を削るため、かなり自由にデッサンすることが可能。ゆたかな表現力を表すことができる技法です。
 

アクアチント

「アクアチント」は、銅板上に松ヤニの粉末を防蝕剤としてまき、熱して定着させた後、描線する技法です。松ヤニの粒子や腐蝕時間によって雰囲気が変わってくるため、面の濃淡がくっきりと表れます。黒の濃淡や色彩の濃淡もはっきりするため、墨絵や水彩画のような版画が作れる技法です。

平版

「平版(へいはん)」は、版の上に「リトクレヨン」などの油脂を含んだ画材で線を描き、化学的な製版処理をして印刷します。版に彫ったり腐蝕したり削ったりという作業がなく、版面が平らなままなので、作家がイメージした通りの絵が版画となる技法です。

リトグラフ

「リトグラフ」は、石灰石の平面にクレヨンなどで絵を描き、少量の硝酸を加えたアラビアゴムを塗って版を作ります。油分を含むクレヨンなどで描いた部分にだけ油性のインクがつき、印刷ができます。多色刷の場合は、下絵の色を分解して色板を複数制作し、順番に重ねて刷っていきます。描いたままの線がそっくり刷られることになり、画家の思ったものとかなり近い版画があらわれることから、ピカソやシャガール、マチスなどが好んで手掛けた技法です。
 

コロタイプ

「コロタイプ」は、写真製版の技法を使った版画です。ガラス板に重クロム酸銀を含んだゼラチンを塗り、版を作ります。濃淡を表すのに使わずゼラチンの皺(しわ)を利用しているのが特徴で、連続諧調による自然な濃淡表現が魅力です。多色刷の場合は一色ずつ重ね刷りをします。手間はかかりますが、濃淡がごく自然でなめらかになる技法です。

孔版画

孔版画(こうはんが)は版に孔(穴)を作り、版上に置いたインクに圧をかけて刷る技法です。上からインクを注ぎますから、原画が左右反転しない点が非常に特徴的。また刷るときに高い圧力を加えなくてもいいため、たくさんの版やインクを重ねることができます。

シルクスクリーン

「シルクスクリーン」は、木枠に張った絹(シルク、ナイロンのこともあります)の上に穴を作り、版を作ります。穴の部分にだけインクを落として刷るという非常にシンプルな方法。インクの発色がいいのが特徴で、色と色の境界線がくっきりとしますから広い面をつかう版画に適した版画です。

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