アンティークな美の極致 ビスクドールの技法や特徴

アンティークな美の極致 ビスクドールの技法や特徴

ビスクドールは、19世紀のヨーロッパで大流行しましたが、現代の最先端おもちゃと変わらないくらいさまざまな仕掛けや技術が用いられています。
横たえると眠るように目を閉じるスリーピングアイや、ミルク、ビスケットを食べるドールなど‥‥。本記事では、ビスクドールの各部の名称と、施されたギミックの中でも特に印象的なものをご紹介します。

ビスクドールとは

ビスクドール Vernon Seeley mo t mo刻 約25cm
ビスクドールは二度焼きを意味する「Biscuit ビスキュイ」の名の通り、焼成された磁器製の人形です。

19世紀に、ヨーロッパの新興富裕層いわゆるブルジョワ層の高級玩具として大人気となり、着せ替え遊びやままごとの相手として買い求められました。

ビスクドールが作られていたのは、主にドイツやフランスの工房でしたが、人気の作家の作品は米国にも輸出されました。当時作られたビスクドールは、今でもアンティークビスクとして世界中で高い人気を誇ります。

なお、ビスクドールが女子向け玩具となるまでには、パリ万博に出品された日本の市松人形もヒントになったといわれています。ビスクドールのコレクターや、アンティークドールの型を使ったレプリカドールの作家は日本にも多く、今なお、ヨーロッパと日本の絆を感じさせます。

プレスドビスク

陶土を人形の型に入れて焼成する作り方のビスクドールを、プレスドビスクといいます。
比較的ビスクドール制作初期に見られた製法です。

ポアードビスク

液状ポーセリンを型に流し込んで焼成する方法を、ポアードビスクいいます。
大量生産が可能なため、ビスクドールの流行に伴ってポアードビスク方式を採用する工房が増えていきました。

ヘッド(頭部)の各特徴と名称

ドイツ製 ビスクドール 168 約59cm04
ビスクドールのヘッド(頭部)は、可動タイプとそうでないものがあります。近年では、日本の作家による球体関節人形などより複雑なポーズを取れる人形も出回っていますが、ビスクドールには頭が動かないタイプもあります。

ショルダーヘッド

初期のビスクドールは、マネキンの役割を果たしていたファッションドールという前身のためか、胸部と一体化したショルダーヘッドが多く見られます。

後年、ヘッドと胸部がジョイント化され、頭を左右へ動かせるようになりました。

ターンヘッド

こちらは、あらかじめ少し右に傾いたポーズで固定されたドールのヘッドのことです。これも、ビスクドールというよりファッションドールの造形としてよく見られる形状です。ちなみに、可動タイプの首はスウィブルネックといいます。

また、べべと呼ばれる赤ちゃん人形はクロスボディ(布に詰め物をした胴体)に留めつけるタイプのフランジネックもよく見られます。

アイの各特徴と名称

アンティークビスクドール クローズマウス47cm
ビスクドールのアイは、よく「アーモンドアイ」という特徴説明がなされます。これは切れ長で細長い瞳の造形をいい、フランスの老舗人形工房ジュモーによく見られます。

ちなみにアジア人の一重まぶたは、よくアーモンドアイと形容されます。日本では一重よりも二重の方が美形とされますが、欧米人にとって一重まぶたはさほどネガティブな印象はないようです。

セットアイ

セットアイとは、目を石膏で固定して動かないようにしているタイプを指します。

スリープアイ

スリーピングアイ、眠り人形ともいいます。両目に錘(おもり)をつけて、人形の体を横たえた時に目を閉じるようにしたものです。

この技術の特許は、ドイツの人形工房「シモン&ハルビック」が1892年に取得しました。起きている時は目を開いていて、寝かせると眠るように目を閉じる仕掛けです。

現在でも多くのままごと人形に同じような機能が搭載されているため、幼い頃ままごと遊びをしたという人も多いのではないでしょうか。

ペーパーウェイトアイとブローアイ

これらはいずれもガラスで作られた瞳を意味します。ペーパーウェイトアイは、フランスのビスクドールに比較的多く見られる手法で、ガラスの塊として目を作ったものをいいます。ペーパーウェイトのように重みのある目です。

これに対して、ドイツのビスクドール工房の多くが採用していたのが、吹きガラスで作るブローアイです。中が空洞になっているため、ペーパーウェイトアイより軽くなっています。

マウスの各特徴と名称

オープンマウス ビスクドール 63cm
ビスクドールの表情を印象づける口。開いているか、閉じているかで雰囲気が変わってきます。

オープンマウス

オープンマウスの中には、歯がつけられているもの、ヘッドの内部構造が見えないように赤い紙を貼られたものなど、バリエーションがあります。

ベベ・グルマン(グルメの赤ちゃん)というビスクドールは、物を食べて足裏や靴裏から食べ物を排出する仕掛けが施されており、口には丸い開口部を隠すために舌がつけられていたといわれています。

クローズマウス

口を閉じている状態はクローズマウスといいます。一般的に、オープンマウスのビスクドールよりも高額な傾向にあります。

オープンクローズマウス

口を開いた表情ではあるものの、口に開口部がないタイプはオープンクローズマウスといいます。

胴体(ボディ)の各特徴と名称

ビスクドール A.M.Germany 341. 3 1 .K: 刻 約35cm 赤ちゃん03
胴体部分には、仕掛けが内蔵されることもありました。トーキングドール(おしゃべり人形)のあるタイプは笛や蓄音機が胴体部分に埋め込まれ、二足歩行するウォーキングトイなども腹部に仕掛けを入れていたといわれています。

キッドボディ

初期のファッションドールによく見られたのが、キッドボディという山羊皮を使った胴体です。可動性はほぼなく、立たせた状態で鑑賞するのが一般的でした。

胴体からひじまでが山羊皮、それより下の部分がビスクという組み合わせはフランスの人形工房ブリュでよく用いられていた組み合わせのため、ブリュハンドともいわれています。

コンポジションボディ

フランスのシュタイナーやジュモーなどの人形工房で用いられていたのが、おがくずや紙をプレスして頑丈にしたコンポジションボディです。関節がゴムでつながれていたために可動性が高く、子女向けの玩具として普及する大きなアピールポイントとなりました。

当時のゴムはたいへん高価で、希少品でした。しかし、お茶会のままごとをするために座らせる、ほかのぬいぐるみたちと並べて立たせるなど、さまざまなポーズを取ることが可能なコンポジションボディのビスクドールは、当時の少女たちにとって良い遊び相手となったことでしょう。

クロスボディ

布に詰め物をしたボディのことで、抱き人形として親しまれるドールによく用いられます。手の部分はビスクで作られますが、コンポジション製のドールや後年大流行したセルロイド製の人形にも用いられました。

オールビスク

胴体部分もすべて焼いた磁器で作られた人形はオールビスクといいます。すべてビスク製の人形は、比較的小さなサイズのビスクドールによくみられます。

ビスクドールの深い世界、気になったら買取へ

和製ビスクドール RE NIPPON 約54cm
ご自宅に眠るビスクドールはどのようなタイプでしたか?ファッションドールから子どもの遊び相手へと進化してきたビスクドールは、100年以上前のアンティークビスクでなくとも、希少価値の高い人形がたくさんあります。

ビスクドールは、19世紀に裕福な少女時代を過ごした女性たちにとって大切な遊び相手であり時には一緒に肖像画に収まるほど大切な存在でした。そのスピリットは現代にも受け継がれ、世界のコレクターの間で譲り、譲られてその価値を高め続けています。

もしも手放すことを検討されている際は、大切にしてくれる次のコレクターへ譲るお手伝いを、買取福助がお手伝いしますのでお気軽にお問い合わせください。